第47話 往路

「やはり、行きも助けるべきだよな」


 オレらがザビンツ帝国にやってくると、サルがそう言ってきた。

 サルの話によるとポートオフィスに行ってから南下するローラー作戦を変更して、行きで助けられる者は、助けていく方針だってさ。

 ザビンツ帝国の奴隷会館はラーグとディトニアみたいだけど、なんか面倒だ。そんなことを思っていると、サルがエミルに声をかけた。


「エミルどうだ? エルフがいる場所わかるか?」

「はい。ラーグに着く前の娼館に一人います」

「あいよ。そこへの案内を頼む」


 オレらはラーグにある奴隷会館へ向かってらしい。サルの提案から、その前に助けられる者は助けようと娼館に行くみたいだ。


 ◆


「ここか? エミル」

「はい、そうです」


 サルがエミルに確認し、オレはサルと共に娼館に入った。


「ようこそ、おいでくださいました。向こうの部屋に嬢がいますので、好みの子を指名してください」

「エルフはいるか?」

「はい。別室にいますので、呼んで来ます」


 しばらく待っているとエルフの少女が来た。震えている。


「お客様、こちらが御所望のエルフでごさいます」

「この子を身受けしたい」

「そうですか。白金貨三枚になりますが、大丈夫でしょうか?」

「あぁ」


 サルは国王からもらった白金貨を出して支払った。


「確かに。準備させますので少々お待ちいただければ」


 エルフの少女は荷物を持ってこちらにやって来た。


「お待たせしました」


 オレらは娼館から出る。サルはエルフの女をエミルに託した。


「エミル。後は頼む」

「はい!」


「いいのか? サル。オレ暴れてもいいぞ」

「国王から言われているのさ。娼館を潰すと市民生活に悪影響がでるって。具体的に言うと強姦が増える」

「ふーん。じゃあ、奴隷会館のときは言ってくれ」


 ◆


 道中、魔獣に遭遇したら、オレはムネピコ達の後方でエルフ達を守りながら戦っていく。


「ファイヤーアロー!!」


ドカーン


(クルル、火力が強すぎだぞ。魔石まで壊してしちまう)


 そして、オレらはラーグに着き、オレとサルはこの町の奴隷会館に入る。


 ◆


「お客さま。今日はどのようなご入用で」

「エルフを買いたい」

「わかりました。こちらでお待ちくださいませ」


 しばらく待つとエルフの女が二人きた。


「お客様、こちらが御所望のエルフです」

「他にいないのか?」

「いるにはいるのですが、調教がまだでして」

「そいつも呼んでくれ」


 今度はエルフの少女がきた。


「お客様、どうでしょうか? お好みの子はいるでしょうか」

「サル、そろそろいいか?」

「いいぜ、ヤン」


 ◆


「楽勝」

「おー、怖っ!」


 ◆


 オレらはラーグを出発して、北へ向かう。ムネピコはサルに疑問を問いかけた。


「サルさ。おいら、わからないことがあるんだけど」

「なんだ?」

「貴族が買ったエルフはどうするの?」

「……。おう、それは盲点だった」


 次もまた、エルフのいる娼館に立ち寄り、そして帝都に向かう。


 ◆


「ん? あの馬車なんか怪しいな」

「サル、先に行っていいか?」

「いいぜ。好きにしたら?」


 オレは馬車の近づき、刃向かってきた奴を殺していく。


「あぁあ、そろそろサーベルをメンテしないとな」


 サル達は積み荷を確認している。すると馬車から少女が降りてきた。サルの話では、彼女は帝都に住んでいて。知らない男達に攫われたそうだ。


「ありがとうございました」

「わい達も、ちょうど帝都に向かうので送ってやるぞ」

「はい! ありがとうございます」


 馬車を奪い取ったので、彼女やエルフを乗せて、帝都に行くことにした。


「サル、御者がいねぇ。殺しちまった」

「大丈夫だぞ。わいできるから」


 ◆


「あのー。お礼がしたいので、家に来てくませんか」


 オレらは帝都に着いた。助けた少女がそう提案したので、サルが「みんな行こうぜ」とオレも巻き込まれた。


 ◆


(家って――これ城だろ。あいつ、頭おかしいんか?)


 少女が自己紹介をし、オレらは城の中に入る。そして三階にある部屋へと案内された。

(へぇ――誘拐された王女だったんだ)


「お父様が来るまで、こちらの部屋にいてください」


 オレら案内された部屋に来た。ちなみにエルフ達は城の入り口で待っている。

 オレらは帝王に感謝の意を伝えられ、サルが代表して話をした。


「おう、そなたたちか。娘を助けてくれたのは」

「はい、運よく近くを通ったもので」

「そうか、なにか礼をせねばらなんな」


「あっ! おいら、いいこと、おもいついた!!」


 ◆


「なるほどな。そなたたちはエルフの保護活動をしていると」

「はい、ルルミア国王がエルフの王に頼まれたので、その使いをしております」

「じゃあ、わしから貴族にエルフを献上してもらうように命を出す。その後、エルフの森に送ればいいのだな」

「はい、陛下、ありがとうございます」


 ◆


 帝王との話が終わり城の入口に向かう。城の入り口では皇女がオレらを見送りにきていた。


「じゃあね。ピコちゃん、エミルちゃん。近くに寄ったら来てね~」

(クルルがいないぞ)


 ◆


 途中、娼館で一人を保護して、次はディトニアの奴隷会館へと向かう。救出方法はラーグの時と同じ。エルフが二人いたぞ。


 ◆


「サルさん。もう少し北の娼館に一人います」

「そこに行って、折り返しだな」


 ◆


 そして往路、最後の娼館に寄り、一人を保護する。


「わらわは、ここから北にいくぞよ。皆とお別れじゃ」

(魔王、火力強過ぎだ。誤魔化すの大変だったぞ)

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