第18話 side スタロン
俺は獲物を逃がし、イラつきながら食堂にいた。
「勇者スタロン様でしょうか?」
王国騎士団の男がスタロンに話かける。
「そうだが、何か?」
「国王陛下から大事なお話があるので、城まで来ていただきたい」
〈追加の褒賞か……〉
「わかった。馬車は?」
「スタロン様を急いで探していたので、そこまで手配しておりません」
〈あーあ、まったく使えないな〉
「じゃあ、行くか」
◆
「面を上げい」
「はっ」
「スタロン、すまぬな休養日に呼び出して。お主の活躍はよく聞いている。常日頃から魔王討伐に向けて己を研鑽しているのだな」
「はい、その通りでございます」
「先日ラルフという者に会ってだな。お主は女遊びが酷くて勇者の資質に問題あると言っていたぞ」
〈あいつ、余計なこと、伝えたな。まあ、いいだろう〉
「はい、娼館に通っているのは事実ですが、資質についてラルフの言っていることは間違いです」
「そうか、私の評判を貶めることはしていないのだな?」
「はい、勇者としてそんなことをするのは絶対にありません」
「ラルフを呼べ」
俺の隣にラルフが来た。
「陛下、参りました」
「ラルフ、スタロンが勇者であることに問題があるのだな」
「はい、先日、町にいた少女を宿屋に誘って襲い、陛下の評判を貶めることをしました」
「スタロン、それは間違いないか?」
「いえ、この者が言っている事は嘘でございます」
「そうなのだな、スタロン」
「はい、勇者の評判を落とすことはしていません」
「議論は平行線だな、どちらに落ち度があるか、他の者に聞いてみたい」
〈はっ、どういうことだ? ここにいるヤツに聞いても意味がないだろ〉
「第三王女を呼べ」
〈はぁ? 王女? 意味わかんねぇ、このジジイ、頭おかしくなったのか〉
入ってきた王女を見て、俺は驚く。先ほど狙った獲物だったからだ。
「こいつはお転婆だけど可愛い娘でな」
俺の手は汗をかいている。マズい。
「娘よ、何か言いたいことはないか」
「はい、お父様、私はこの勇者に襲われました。そしてラルフ様に助けられました」
「わかった。スタロン、何か言うことは」
「陛下、この者達すべて噓をついております。私は悪くありません」
俺は最後まで悪あがきをした。
「黙れ!!」
「……」
「この者の処遇を申す。勇者の資格を剝奪し、極刑とする」
「陛下! 極刑はいくらなんでも」
「スタロン、この場での虚偽申告。王族への強姦未遂。極刑に当たると思うが」
「ウソだ! ウソだーー! 俺は何も悪いことしていない!!」
そして俺は牢屋へと連れていかれた。
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