第40話 思い出のギルド

 僕達はソレトの町を目指して進む。僕とリーンがお世話なったギルドに行こうと。


「懐かしいね」

「そうだね」

「あーし、ゴブリンに攫われてるところをラルフとリル姉に助けてもらったんだよね」

「そう、パーティーを組んだ翌日のことだったんだよ」


 そんなことを話していると野盗に囲まれた。


「おーっと、ぐふっ」


 もう何ども戦っているので、みんな手馴れている。野盗を倒して、縄で縛り、ムネピコと僕とヤンでアジトに行く。案内は一番下っ端のヤツだ。アジトの中では――、


 ◆


「やめて、あっ、イヤ、あぁん、イヤっ」

「気持ちいいよな。もっと声出せよ、俺の女だからな」

「うっ、うっ、いゃ、あっ」


「ムカつく」


 ヤンは男の首を刎ねる。そして、ムネピコは布とポーションを取り出し、湿った布で犯されていた少女の体を拭く。


「ぐすっ」

「もう、大丈夫だからね」

「ぐすっ、ぐすっ」


 彼女は俯いたままだ。僕はリーンとエミルを呼び、彼女の事をまかせる。そしていつものように、お宝を回収。


「なあ、ラルフ、オレにいい考えがあるんだけど」


 ◆


「お前ら、こいつみたいになりたくなかったら自分の右足と他の奴の左足を縛れ」


 縛られていた野盗の前で、そう言いヤンは生首を転がす。驚き恐怖に怯えた野盗達は、ヤンの指示に従い、足を縄で縛っていく。


「じゃあ、お前らあそこの木まで走れ。イチ、ニ、イチ、ニ、だぞ。失敗したらわかっているよな」

(これ、三十人三十一脚だね。いや、そんなこと言ってられないか……)


「!!」


 野盗達は顔を見合わせる。失敗すればどうなるか。


「早くしろ」


「「「せ、せーの、イチ、ニ、イチ、ニ……」」」


 野盗達は、すぐに倒れた。


「そうか」


 ヤンはそう言い一人の首を刎ねる。


「そこからでいいから、走れ」


 倒れては一人首を刎ねられ、倒れては刎ねられ、どんどん野盗達は減っていく。


「おいおいおい、五人ならいけるだろ」


 そして、生き残った野盗たちは、なんとかゴールにたどり着いた。


「おっ、おめでとさん。ご褒美をくれてやる」


 ヤンは五人の首を刎ねた。

(鬼だ。鬼がいる)


「はぁあ、これであの女の悪夢が晴れればいいけどな」


 ◆


 保護した少女は冒険者で、パーティーメンバーに逃げられて捕まったそうだ。


「とりあえずソレトの町に行こう」


 僕達は少女と一緒にソレトの町へと向かった。


 ◆


「ラルフ、来たね」

「あぁ」


 僕達はソレトの冒険者ギルドの中に入った。


「あれ、ラルフとリーンじゃない。久しぶり」

「久しぶりです。ちょっと相談があるのですが……」


 なじみのある受付嬢に野盗達のことを話した。


「そうなのね。とりあえず仮眠室に連れていきましょ」


 僕は少女を預け、保護してもらうよう頼んだ。


 ◆


 宿屋に着き、ミーティング。


「明日の昼には出発する予定だ。今日はもうゆっくり休んでくれ」


「ラルフ、娼館はどこだ?」

「この町には無いよ」

「マジか、癒せねぇじゃん」

(サル、無いものは無い。諦めてくれ)


 翌日の朝、僕とリーンはギルドへ行った。暇だと言ってヤンもついてきた。


「あっ、ラルフ! ちょっと来て」


 ギルドに着いたと思ったら、受付嬢に声をかけられ、仮眠室に行くよう、言われた。なんでも保護した少女がお礼を言いたいそうだ。


「ヤンさん、ラルフさん、リーンさん。ありがとうございます」

「あっ、大丈夫だよ。全部やったのヤンだし」

「まあな、なんてことないよ。それよりもお前の心の傷の方が心配だ」


 ヤンがそう言うと少女の頬に涙が伝わった。


「す、すみません。私、こんなんで、何も返せなくて……」


 僕達が彼女と話していると三人の冒険者がやってきた。


「おー! お前、大丈夫だったのか?」

「心配したよ。俺ら食事が摂れなくなかったから」

「無事で良かった」


(あぁ、こいつらが見捨てた奴らか)


「これからクエストを選ぶから、ミーティングな」


 そう言って彼らはテーブル席に向かって行った。もちろん少女は行かない。


「おい、聞いてたか、早く来いよ」


(ヤバい、ヤンの目つきが変わった)


 彼女を見捨てた冒険者の言葉を聞いたヤンが、ブチ切れそうだったので僕はヤンをなだめた。


「私は抜ける。あなた達とはもう組まない」


「はっ? なに言ってるんだ。いいから来いよ」

「ははは、冗談だろ。俺のこと好きなくせに」


「もう、あなた達のことなんか大っ嫌い!」


 そう言って少女はヤンの腕に絡みついた。


「誰だこいつ?」

「あれ、ダークエルフじゃね」

「ははは、冗談はほどほどにしろ。早く来いよ」


(こいつら馬鹿だな。ダークエルフの恐ろしさを知らないなんて)


「私は犯されたの。この人達が助けに来てくれなかっら、まわされてしまうところだったのよ」


「そうなのか。まわされなかったから、まだマシじゃね?」


「ヤン! やめろ! 落ち着けよ」


 僕はブチギレているヤンを羽交い締めにして必死に止める。


「ムカつく。表に出ろ!!」


「はぁあ? お前調子に乗ってんじゃねぇよ」


「いいぜ。三人まとめて来ても。どうせ勝てないだろうし、かかって来いよ」

(はー、やっちまったな。もう止めたら僕が殺される)


 ヤンと三人はギルドの外へ。僕達も一緒に行った。


「おい、サーベルなんか取り出して」

「はは、卑怯者だな」

「まぁ、勝つ自信が無いんだろ」


「ラルフ」


 僕は投げられたサーベルを受け取った。そして、


 三人は撲殺された。


 ヤンが僕の所に来る。


「あんがとよ」

「お前、手加減しろよ」

「オレにできると思うか?」

「無理だな」


 ◆


「僕とリーン、近くに来たら、顔を出します。お世話になりました」


 僕がギルドの職員にそう言うと、少女はヤンの前に立ち、こう言った。


「ありがとうございました。ヤンさん、皆さん、お体に気を付けてお過ごしください」


 挨拶をし終えて、ギルドを出る。


「じゃあ、行こうか」


 そして、僕達はソレトの町をあとにした。

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