第41話 side リーン
あーし達の旅は続く。そして、ようやくオーラン帝国帝都に辿り着いた。
「明日、明後日は休養日にする。三日後、出発ね」
いつも通りのミーティング。今日はラルフとヤンと共にギルドへ行く予定だ。
◆
「換金してくるよ」
ギルドに着いて、ラルフはあーし達の持っていた魔石を持っていき、自分の役割はこれもそうだと、当たり前かのように受付に行く。ヤンは周りの様子を見ていた。
「なんか、歯ごたえのある奴、いなさそうだな」
「ヤンは相変わらずだわね」
そう言って、あーしも周りを見ていると、銀髪の男の子が俯いている姿が見えた。
(どうしたんだろ)
あーしはその子が気になってしまった。
「じゃあ、戻ろうか」
「あっ、ラルフ、先に戻って。あーし、このギルドをもう少し見たい」
「わかった、先に戻るよ」
あーしは彼のもとへ行く。
「お隣いいですか?」
彼はこちらを向く。
(えっ、紅い瞳。あーしと同じじゃん!)
「いいですよ」
「ありがとう。あーしリーンって言うの、ジョブは魔女。君は?」
「俺はリュークです。ジョブは神官です」
(サルと同じか)
「元気なさそうだけど」
「……」
「誰かに共有してもらったら楽になれるよ。なにがあったのか、教えてくれない?」
彼は頬には涙の跡があった。
「俺、彼女に振られたんです」
「そっかぁ」
「欲しいものはたくさん買ってあげたのに、別に男がいたんです」
「そうなの……」
「もうパーティーにいたくなくて、辞めるって言ったんです」
「うん」
彼は泣いてしまった。
(うーん。励ましてあげたいな)
「あのさ、リューク。この後って時間ある?」
「あります」
「じゃあさ、あーしとデートしない?」
「えっ」
「ほら、落ち込んでても何も変わらないでしょ。だからパーッと遊ぼうよ」
ギルドを出て、リュークと街を歩いていく。どこに行けばいいのか考えもせずに誘ってしまったが、リュークにいろんなお店を教えてもらった。
「地元なのに帝都初めてなんだよね」
「そうなんですか」
「ごめんね。遊べる場所知らなくて」
「大丈夫ですよ。それよりデートしてくれるのがありがたくて」
すごく楽しかった。このままリュークと遊び続けたい。そう思ってしまった。
「ねぇ、明日も遊ぼうよ」
「えっ」
「まだ、暗い顔してるからね。どう?」
「あ、あ、お願いします。ありがとうございます」
「ギルド集合でいいかな?」
「はい。時間は?」
彼と明日の待ち合わせ時間を相談して、それから宿屋に向かった。
◆
「遅いと思ったら、そんなことがあったんだね」
「そうなんだぁ。それで彼と明日も遊ぶ約束をしたんだぁ」
「気分転換にいいんじゃない。明後日も遊ぶでしょ」
「どうかな。彼の都合次第かな」
ラルフとそんな話をしていると、とんでもないことを言ってきた。
「リーンさ、地元だよね」
「はっ? そんなの知っているでしょうよ」
「うん。僕の勘だけど、その子を気に入ってしまって、ずっとその子といたいでしょ?」
「……そうだね」
「パーティーに誘うこともできるけど、サルと役割が被る」
「……」
「うーん。どうしたらいいんだろ。あぁ、そうか。解決する方法が一つある」
「なに?」
「リーンがパーティーを抜けることだよ」
あーしは驚いた。ラルフがそんな提案をするなんて、
「僕はね。リーンに幸せになって欲しい。その子、瞳もリーンと同じでしょ? 何かの縁だと思う」
「……」
「友達付き合いが無くなるわけではないからさ」
「……」
「アカ、ミド、アオもいるし、本当にその子を好きならば、付き合ってもいいと思う。それに上手くいかないくてダメだったら、またパーティーに戻ってくればいいし」
「……図々しくない?」
「ははは、最古参の僕がいいって言っているんだから大丈夫でしょ」
「そうかな」
「まあ、考えてみてよ。ムネピコが炎系の魔法も使えるようになって、遠距離攻撃もできるから問題ない」
(うーん。どうしよう)
◇
あーしはそのことを一晩悩んだが答えは出なかった。でも次リュークに会えば、何かわかるかもと、そう思い待ち合わせ時間にギルドへ行った。
「リュークごめん。待ったかな」
「いや、今さっき着いたところだよ」
ギルドの受付の方が大爆笑していた。
(これ一時間以上待ったよね)
リュークといる時間はとにかく楽しかった。そして腕をからめて彼の香りを嗅いだら、なんだか安心した。
(この香りいいなぁ)
「リ、リーン。当たってるよ」
「なにが?」
「……胸が」
「へへ、どう? 柔らかい?」
彼は照れてしまったのか顔を背ける。
「ねぇ、明日も時間ある?」
そう聞くと、彼は微笑みながらあーしの顔を見て、言った。
「うん、あるよ」
「じゃあさ、今夜あーしの部屋に来ない? そしたら元気でるから」
(ずっと一緒にいたい。離れたくないなぁ)
◆
彼を連れて宿屋に行き、ラルフの所へ。
「リーンお疲れ。彼がそう?」
「うん。そう」
「は、初めまして。リュークといいます」
「僕はラルフ。パーティーのリーダーをしている。君ジョブは?」
「神官です」
(ラルフ、知っているでしょうよ)
「リーン。もう一部屋とるか?」
(えっ、なに?)
「おまえ、ムネピコ、エミルと同室だろうよ」
(あっ)
「まったく、二人を呼んでこい」
結局、ラルフの計らいでもう一つ部屋をとることになった。
◆
「緊張してる?」
「うん」
「あんだけデートしたんだから、緊張しなくても大丈夫だよー」
あーし達は部屋から出て、一足先に食堂へ行った。
「「いただきまーす」」
「美味しい」
「美味しいね。それちょっともらっていい? あーしの少しあげるからさ」
夕食を食べて部屋に戻る。リュークと二人きりだ。
(わぁ、ドキドキしてる)
ベッドの上に座り、しばらく無言の時間が過ぎる。
「ねぇー」「あの」
「そちらからいいよ」
「いや、そっちから」
「「ぷっ、はははは」」
「これ、定番のやり取りじゃん」
「そうだね」
(よかった、笑ってくれている)
「暑いね」
「そう?」
そう言ってあーしは服を脱ぐ。
「えっ、リーン、なにしてるの!」
「ほぇ、暑いから脱いだの」
「いや、あの。その」
あーしは上も脱ぎ、胸をさらけ出す。リュークが驚いているのがわかる。初々しくてカワイイ。
「ふふーん。綺麗でしょ。触ってもいいよ」
(ラルフは揉みに来なかったからなぁ。触ってくれるかな……)
「いいの?」
「うん」
「俺、こんなこと初めてだから」
「へー、女を抱いたことないんだぁ」
「……まぁ」
「あーし恥ずかしいんだよ。でも元気になって欲しいから」
◆
翌朝、あーしとリュークは同じベッドの上で語らう。
「リューク、どうだった?」
「すごく良かった」
「あーし、今までで一番気持ち良かった♡体の相性抜群だね。付き合っちゃおうか♡」
今日もリュークと街を散策した、あーしの心は満たされていく。また部屋に誘ってリュークと一夜を過ごす。
◇
翌朝
「じゃあ、ミーティングに行ってくるから待っててね♡」
リュークに部屋で待っていてもらい、ミーティングへ。
あーしはラルフ達に大事なことを伝えた。
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