第41話 side リーン

 あーし達の旅は続く。そして、ようやくオーラン帝国帝都に辿り着いた。


「明日、明後日は休養日にする。三日後、出発ね」


 いつも通りのミーティング。今日はラルフとヤンと共にギルドへ行く予定だ。



「換金してくるよ」


 ギルドに着いて、ラルフはあーし達の持っていた魔石を持っていき、自分の役割はこれもそうだと、当たり前かのように受付に行く。ヤンは周りの様子を見ていた。


「なんか、歯ごたえのある奴、いなさそうだな」

「ヤンは相変わらずだわね」


 そう言って、あーしも周りを見ていると、銀髪の男の子が俯いている姿が見えた。


(どうしたんだろ)


 あーしはその子が気になってしまった。


「じゃあ、戻ろうか」

「あっ、ラルフ、先に戻って。あーし、このギルドをもう少し見たい」

「わかった、先に戻るよ」


 あーしは彼のもとへ行く。


「お隣いいですか?」


 彼はこちらを向く。


(えっ、紅い瞳。あーしと同じじゃん!)


「いいですよ」

「ありがとう。あーしリーンって言うの、ジョブは魔女。君は?」

「俺はリュークです。ジョブは神官です」

(サルと同じか)


「元気なさそうだけど」

「……」

「誰かに共有してもらったら楽になれるよ。なにがあったのか、教えてくれない?」


 彼は頬には涙の跡があった。


「俺、彼女に振られたんです」

「そっかぁ」

「欲しいものはたくさん買ってあげたのに、別に男がいたんです」

「そうなの……」

「もうパーティーにいたくなくて、辞めるって言ったんです」

「うん」


 彼は泣いてしまった。


(うーん。励ましてあげたいな)


「あのさ、リューク。この後って時間ある?」

「あります」

「じゃあさ、あーしとデートしない?」

「えっ」

「ほら、落ち込んでても何も変わらないでしょ。だからパーッと遊ぼうよ」


 ギルドを出て、リュークと街を歩いていく。どこに行けばいいのか考えもせずに誘ってしまったが、リュークにいろんなお店を教えてもらった。


「地元なのに帝都初めてなんだよね」

「そうなんですか」

「ごめんね。遊べる場所知らなくて」

「大丈夫ですよ。それよりデートしてくれるのがありがたくて」


 すごく楽しかった。このままリュークと遊び続けたい。そう思ってしまった。


「ねぇ、明日も遊ぼうよ」

「えっ」

「まだ、暗い顔してるからね。どう?」

「あ、あ、お願いします。ありがとうございます」

「ギルド集合でいいかな?」

「はい。時間は?」


 彼と明日の待ち合わせ時間を相談して、それから宿屋に向かった。


 ◆


「遅いと思ったら、そんなことがあったんだね」

「そうなんだぁ。それで彼と明日も遊ぶ約束をしたんだぁ」

「気分転換にいいんじゃない。明後日も遊ぶでしょ」

「どうかな。彼の都合次第かな」


 ラルフとそんな話をしていると、とんでもないことを言ってきた。


「リーンさ、地元だよね」

「はっ? そんなの知っているでしょうよ」

「うん。僕の勘だけど、その子を気に入ってしまって、ずっとその子といたいでしょ?」

「……そうだね」

「パーティーに誘うこともできるけど、サルと役割が被る」

「……」

「うーん。どうしたらいいんだろ。あぁ、そうか。解決する方法が一つある」

「なに?」

「リーンがパーティーを抜けることだよ」


 あーしは驚いた。ラルフがそんな提案をするなんて、


「僕はね。リーンに幸せになって欲しい。その子、瞳もリーンと同じでしょ? 何かの縁だと思う」

「……」

「友達付き合いが無くなるわけではないからさ」

「……」

「アカ、ミド、アオもいるし、本当にその子を好きならば、付き合ってもいいと思う。それに上手くいかないくてダメだったら、またパーティーに戻ってくればいいし」

「……図々しくない?」

「ははは、最古参の僕がいいって言っているんだから大丈夫でしょ」

「そうかな」

「まあ、考えてみてよ。ムネピコが炎系の魔法も使えるようになって、遠距離攻撃もできるから問題ない」


(うーん。どうしよう)


 ◇


 あーしはそのことを一晩悩んだが答えは出なかった。でも次リュークに会えば、何かわかるかもと、そう思い待ち合わせ時間にギルドへ行った。


「リュークごめん。待ったかな」

「いや、今さっき着いたところだよ」


 ギルドの受付の方が大爆笑していた。


(これ一時間以上待ったよね)


 リュークといる時間はとにかく楽しかった。そして腕をからめて彼の香りを嗅いだら、なんだか安心した。


(この香りいいなぁ)


「リ、リーン。当たってるよ」

「なにが?」

「……胸が」

「へへ、どう? 柔らかい?」


 彼は照れてしまったのか顔を背ける。


「ねぇ、明日も時間ある?」


 そう聞くと、彼は微笑みながらあーしの顔を見て、言った。


「うん、あるよ」

「じゃあさ、今夜あーしの部屋に来ない? そしたら元気でるから」


(ずっと一緒にいたい。離れたくないなぁ)


 ◆


 彼を連れて宿屋に行き、ラルフの所へ。


「リーンお疲れ。彼がそう?」

「うん。そう」


「は、初めまして。リュークといいます」

「僕はラルフ。パーティーのリーダーをしている。君ジョブは?」

「神官です」


(ラルフ、知っているでしょうよ)


「リーン。もう一部屋とるか?」

(えっ、なに?)


「おまえ、ムネピコ、エミルと同室だろうよ」

(あっ)


「まったく、二人を呼んでこい」


 結局、ラルフの計らいでもう一つ部屋をとることになった。


 ◆


「緊張してる?」

「うん」

「あんだけデートしたんだから、緊張しなくても大丈夫だよー」


 あーし達は部屋から出て、一足先に食堂へ行った。


「「いただきまーす」」

「美味しい」

「美味しいね。それちょっともらっていい? あーしの少しあげるからさ」


 夕食を食べて部屋に戻る。リュークと二人きりだ。

(わぁ、ドキドキしてる)


 ベッドの上に座り、しばらく無言の時間が過ぎる。


「ねぇー」「あの」


「そちらからいいよ」

「いや、そっちから」


「「ぷっ、はははは」」


「これ、定番のやり取りじゃん」

「そうだね」

(よかった、笑ってくれている)


「暑いね」

「そう?」


 そう言ってあーしは服を脱ぐ。


「えっ、リーン、なにしてるの!」

「ほぇ、暑いから脱いだの」

「いや、あの。その」


 あーしは上も脱ぎ、胸をさらけ出す。リュークが驚いているのがわかる。初々しくてカワイイ。


「ふふーん。綺麗でしょ。触ってもいいよ」

(ラルフは揉みに来なかったからなぁ。触ってくれるかな……)


「いいの?」

「うん」

「俺、こんなこと初めてだから」

「へー、女を抱いたことないんだぁ」

「……まぁ」

「あーし恥ずかしいんだよ。でも元気になって欲しいから」


 ◆


 翌朝、あーしとリュークは同じベッドの上で語らう。


「リューク、どうだった?」

「すごく良かった」

「あーし、今までで一番気持ち良かった♡体の相性抜群だね。付き合っちゃおうか♡」


 今日もリュークと街を散策した、あーしの心は満たされていく。また部屋に誘ってリュークと一夜を過ごす。


 ◇


 翌朝


「じゃあ、ミーティングに行ってくるから待っててね♡」


 リュークに部屋で待っていてもらい、ミーティングへ。

 あーしはラルフ達に大事なことを伝えた。

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