第39話 RGBエミルヤン
僕達はパッソコ村に向かって旅をしていた。
「ラルフ、ありがとうね。あーしの我儘に付き合ってくれて」
「うん。大丈夫。もうそろそろ着くよ」
村に近いづいていくと、何やら大きなものが揺れている。
(あれ? なんだろ)
「わーい。おいら初めてみたー、キングスライム!」
(本当だ。でかい)
そこには赤、緑、青のキングスライムがいた。まるで僕達を待っているかように。僕達が村の門をくぐると、キングスライム達が光り、数万ものナノスライムになる。その変化に驚いるとナノスライムは規則正しく並び始めた。
『リーンおかえりー』
(すごっ! 光って、カラーだ)
『ごめんなさい』
(そうか! RGBだね)
『くさったおにく』
(あぁ、亡骸か……)
『しょうかしちゃた』
(と言うことは骨だけ残っているのか)
「えっ、アカ、ミド、アオなの?」
『そうだよリーン』
「リーン、このスライム達、僕達を知らないから、名前を伝えてくれ」
「わかった。この子が勇者ムネピコ」
『てんねん』
(性格だね)
「こいつがサル」
『エロエロ』
(流石スライム。よくわかっているじゃん)
「彼がラルフ」
『付与術師』
(何故、僕は漢字なの?)
「褐色色の肌がヤン」
『ころしや』
(うん。そうだね)
「この子がエミル」
『ヤンスキスキ』
(バラすな)
「わ、わ、わーーー」
『エミルヤンスキスキ』
(頼む。これ以上イジメないでくれ)
「ラルフ、なんだこれ? よくわからん」
(ヤン、わからなくていいよ)
◆
スライム達の温かい歓迎のもと。リーンは両親の骨を拾いにいく。
「とうさん……かあさん……」
僕達はその様子を近くで見ていた。そして、リーンはその場で泣き崩れる。
僕達はお墓を作る。土を掘り返し、木で十字架も作る。頬に雫がながれ、リーンは骨を埋める。最後の別れを偲ぶように。
「ありがとう。とうさん、かあさん。あーし、幸せになります。天国から見守ってください」
彼女は両手を合わせ祈りを捧げる。僕達は黙祷した。
◆
『きをつけて』
「ありがとう。アカ、ミド、アオ。あーし、行ってくる」
『いってらっしゃいリーン』
◆
「ラルフ、ありがとう」
その言葉、リーンに何て返せばいいのか、目を閉じて考えるがわからない。
「あーし、絶対、幸せになる」
僕は彼女の決意を黙って聞くことしかできなかった。そしてパッソコ村に別れを。
(神様。リーンに機会を与えてくれて、ありがとうございます)
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