第56話 家族と
ジリリリリジリリリリジリリリリ
『はい』
「あっ、リーン」
『うーんと、ラルフかな?』
「そう」
『どうしたの?』
「あのね。また、食べ物選手権でヘンダーソン三泊四日ペア宿泊券を手に入れたんだ」
『うん』
「よかったら、あげようか?」
『うーんと。あーしら、前に使わせてもらったから、オリバーとかムネピコとかにあげた方がいいかな』
「わかった、ありがとう」
『ねぇ、ラルフ。無事に着いた?』
(あぁ、無事にヘンダーソンに着いたよ)
◆
ジリリリリジリリリリジリリリリジリリリリ
(なんだ? リーンからか?)
「はい」
『うほん、アテネです』
「えっ、女神様!」
『そちらからは、かけられないみたいですね。お姉様と代わってください』
「クルル」
「なんじゃ?」
「女神様から代わってだって」
「おっ、アテネからか」
◇
「アテネ、どうした?」
「うーん、そんなこと言われても、間違ごうてしまったからのう」
「早く帰ってこい? だからラルフの家についてからじゃ」
「そうか、なんて姉思いなんじゃ。わらわは幸せだぞ」
「ほう、なるほどな」
「わかった、ラルフにも言うからの」
「姉を馬鹿にするのか、ちゃんと言うわい」
◇
「ラルフや」
「クルル、女神様なんて言ってた?」
「もう一回、天界に連れていってもよいと言われたのじゃ」
「えっ」
「向こうでアテネが親戚回りして謝ってくれるそうじゃ」
(そうなんですね。女神様、心中お察し申し上げます。)
「じゃあ、行くかの。みんな集まるのじゃ」
◆
「ふう、今回は上手くいったようじゃの」
「クルル」
「なんじゃ?」
「ありがとう。ここからだと歩いて二時間で着くよ」
「しもうた。そんなに時間がかかるのか。ラルフ、わらわはもう戻らねばならん」
「いや、ここまでこれただけで十分だよ。ありがとう。クルル」
「ラルフ、わかったのじゃ。また来るからのう」
(また、来る気マンマンなんですね。クルル、いや魔王)
◆
「もう少しだね。この子達、寝ちゃったけど」
「ずっと旅をしてきたからね。疲れるよ。頑張った方だと思うよ」
ディアと今回の旅について話し合う。ヘンダーソンで見た風景。リーンの故郷に行けたこと。帝都でリーンの旦那さんに会ったこと。彼女は新しいことを体験して、この旅を有意義に過ごせたと、感慨深く振り返っていた。僕が原因で新婚旅行には行けなかったが、その分、家族みんなで旅行に行こうと、そんな話もした。
「帰ってきたね」
「あぁ、家に帰るまでが遠足だから」
「気を付けなさいって」
「「はははは」」
そんなことを話していると、家の前に人影が見えた。
「よう、久しぶり。会いに来たぜ」
エンチャンター、追放されたテイマーに声をかける フィステリアタナカ @info_dhalsim
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