第6話 side ミディア

「聖女様、こちらになります」

「ベールがあったら部屋に届けてください」


 総本山にある神殿まで、私は恥ずかしいと言ってローブで顔を隠してきた。顔がわかってしまうと、いろいろなことに巻き込まれてしまうと考えたからだ。用意された部屋に入り、女神の像に向かって祈る。


(神様、アテネ様、これからどうすればいいのか導きをお与えください)


 数刻後、使いの者が来た。


「聖女様、ベールをお届けに参りました。それと手紙が来ています」


 ラルフからだ、嬉しい。私はワクワクしながら封を開け、読んでみるとそこには、


(えっ、テイマーの女と魔女の女とパーティー組んでいる?)


 手紙を読み続けると、パーティーメンバーの女性たちの行動に困惑している彼の状況がわかった。


(まずい、ラルフ取られちゃうかも。そんなのイヤだ)


 私は焦った。ラルフがパーティーメンバーの女性と良い感じの関係になるのではないかと。早くラルフと会いたい、でもここから一人でラルフの元へ行くのも危険だ。


(そうだ! 辛い、寂しいって書いて、来てもらおう。脱出の計画も練らないと)


 私は他のことそっちのけで、ラルフが奪われることのないように祈り続ける。


 そして威厳のある声が、どこからともなく聞こえてきた。


『聖女よ。北に行くのだ』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る