第5話 初めての野営と〇〇縛り

 縄で縛ろうとするリーンの魔の手から逃れ


「わかった。わかったから、飲むから」


 そう言って、あらかじめ用意していた別のコップのジュースをちびちび飲む。


「あんたね。もっと勢いよく吞みなさいよ」

「僕は下戸なんだよ」

「ラルフさん。男じゃないわー」


 二人がハイペースで飲むのをよそにして、僕はちびちび飲み続ける。コップが空になったところで


「気持ち悪い、横になって休む」


 僕はベッドに潜って、耳栓をする。


「ったく、だらしないわね」

「ラルフさん、根性ない」


「「ハハハハハ」」


 昨日、今日と神経を使い過ぎたので、すぐに眠ることができた。


 ◆


 翌朝、目覚めてベッドの上で僕は背伸びをする。


「んーーっ。ん? はぁ、だよね」


 周りを見ると、そこには転がっている酒瓶とゴミ、そして下着姿で酔いつぶれている痴女二人がいた。


 痴女二人をベッドに運び、散らかっているものを分別した。一階に降り、それらと銅貨を女将さんに渡し、食堂へ。

(昨日クエストやったし、リーンもたぶん二日酔いだから、今日は休養日にしよう)


 部屋に戻り、手紙を書く。

(ミディア、この状況をなんて思うんだろう)



 お昼過ぎ


「君たちさ、お金持っているの?」

「強奪した分しか……」

「ほとんどない」


「しばらくお酒はダメね。特別祝う日は別だけど。聞いてる?」

「わかったわ」

「はーい」

「はぁ、今日はお休みね。僕は買い物行ってくる」


 ◆


 僕達はクエストをこなしていく。順調だ、魔石もたくさん手に入れた。リーンの霜柱をかなり強化するとアイスアローが打てるようになった。

 それとディル達の体は急成長し、エンチャントをかけなくても弱い敵なら楽に倒せるようになった。


「そろそろ、厩舎付きの宿屋にしないといけないね」

「えー、あたい離れるのいやだー」

「部屋が壊れて、修理費請求されてもリルルが払うのならいいけど」

「…… 卑怯者」


 リルルとディル達のことを話し合っていると、リーンから声をかけられた。

「ラルフさん、手紙が届いていますよ」

「ありがとう」


 ミディアからの手紙だ。手紙には、檻の中みたいで辛い、迎えに来て助けて欲しいということが書かれていた。

 僕はリルルとリーンにお願いをする。


「前に組んでいたパーティーメンバーが檻の中にいるみたい、それで助けに行こうと思う」

「女ね」

「面白そう」


「教国へ一緒に旅をしてくれるとありがたい」

「いいわよ」

「旅行だーー!」


「馬車で二週間くらいだから、必要なもの買いに行こう」

「わかった、あたいロープとローソクを買ってくる」

「あーしも行く」


(百歩譲って、ロープは野盗用で、ローソクは野営用だと思うことにしよう)


 馬車の旅は護衛がしっかりと付いている。ディルはフェンに乗ってフェイと共に走って馬車についてくる。

 馬車を乗り継ぎ、一週間ほど経った日の夕方過ぎ。


「予定通り、今日はここで野営になります」


 御者が皆に伝えた。

 パーティー初めての野営。リーンはいつものように水を作ってくれて、炭にディルが火を付け、調理する。夕食はシチューだ。食欲をそそる良い匂いがする。

 そして匂いに釣られた御者の方から言われる。


「わたくしに、そちらの食べ物を分けてくれないでしょうか」

「持っているの携帯食ですよね。いいですよ」


 他のお客さんも集まってくる。


「私にもください」

「俺にも」

「僕にもください」


 結局、みんなに配ることになった。和気あいあいな雰囲気で楽しかった。


 夜、事件が起こる。

 テントを張って、寝る準備をしているとガラの悪い三人の護衛達がこちらに来た。


「あんちゃん、いい女連れてるな、どっちか貸してくれよ」

「痛い目にあいたくなかったら、素直に従いな」

「オレ、こっちの女の方がいい」


 そう言って男はリルルを捕まえる。リルルはスレイにお願いといい、スレイが男達に唾をかける。


「ん? 何をした!」

「痺れて感覚がねぇ」

「動かせねぇよ」


 そしてリルルは手際よく男達を亀甲縛りにしていく。

(リルル。いったいどこで覚えたのよ)


「フフフ」


バチン


「女王様とお呼び!」


バチン


「女王様とお呼び!」


バチン


「フフフ、足りないようだね」


 リルルは男達にローソクを垂らす。


「この薄汚いブタ野郎め! あーしの足を舐めな」


 リーンは男達の顔の上でウォーターボールを落下させる。


(こいつらとは、一線を越えてはいけない。マジで)


 周りにいた男どもはゲラゲラ笑っていたが、女性はドン引きしていた。そして御者から、


「この護衛はどうしたらいいんでしょうか?」

「僕達が代わりに護衛できますから、放っておきましょう」

「しかし」

「強姦しようとしていたので、他の客に迷惑がかかるかもしれません」

「わかりました。置き去りにします」


 御者の方の相談を受けた後、僕はリルルに思っていたことを伝える。


「あのさ、リルル、ディル達、急に大きくなってきたじゃん」

「うん、ラルフと組んでから」

「ディル達にエンチャントすると力が上がるじゃん」

「うん」

「持っている力以上のことを発揮すると、たぶん身体に大きな負荷がかかると思う。それに対応するために、大きくなって身を守っているのだと」

「そういうこと」

「仮説だけどね」

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