第8話 かき氷とカレー

 教国から馬車で二日程かかる距離にある街で、僕達はとどまった。ディル達が眠りについたままだったからだ。


 夜


 僕は今日も足止めかと思いながら、宿屋でミディアへの手紙を書く。


(あっ、忘れてた。ディル達の食べ物を補充しとかないと。どのくらい残っているんだろ?)


 そして僕はリルル達の部屋を訪ねる。


コンコン


「入るよ」


ガチャ


「よくもやったな。えい」

「そんなんじゃ当たりませんよーー」

「甘いわね、えーい」

「痛っ、リル姉、顔面は反則」


 そこには、乱れた下着姿で枕投げをしているリリ痴女コンビがいた。

(なにやってんの? もう下着姿は見慣れたけど)


「お取込み中、すまない」

「あっ、ラルフもやる?」

(蜘蛛の巣に飛び込んでしまった……)


「リルル、ディル達の食べ物、あとどのくらい残っている?」

「えー、知らなーい」

(お前、あの子達の主人だろ)


「わかった。適当に補充しとく」


ガシッ


「乙女の部屋に入ったんだから、一緒にやりなさい」

(片乳見えているのに堂々としているのは、乙女なんですか? 恥じらうものではないんですか?)


「リーン、縛りなさい」

「りょうかーい」


 そして、僕は深夜まで彼女達の的になり続けた。


 ◆


 翌朝


「リーン、この器に霜柱みたいな氷をたくさんいれて」

「よくわかんないけど、いいっすよ」


 リーンにお願いして氷を作ってもらい、その氷に僕は買ってきたシロップをかける。


「これ、試しに食べてみて」


 そうリルル達に促すと。


「おいしい」

「ヤバいね。リル姉」


 彼女達はほっぺが落ちそうな顔をしているのがわかった。


「リーン、三人分の氷作ってもらってもいい?」

「了解!」


 リーンはガシガジ食べる。


「うー、頭痛い」


 しばらく放っておくと、リーンはリルルに言った。


「この食べ物、アタマキーンって名前にしたい」

「それは、安易過ぎるわ。女王様の氷は?」

(やめて、ムチを連想するから)


「リル姉、それは無い。王子様の氷の方がいい」

「それなら、カレー〇〇〇様がいいんじゃない?」

「カレー入って無いっすよ」

「それなら、氷にカレーをかければ」

(もうやめてくれ。頼む)


 彼女達に「二人とも食べてて、僕ディル達の様子見てくるから」と言い、ディル達のもとに行くと僕は驚いた。


「えっ」


 そこには収束していく光があり、現れたのは。


「せ、青龍にスレイプニル……フェンリルまで……」


 三体の聖獣はこちらを見て、微笑んだ。


「ディル、スレイ、フェイなのか……」


 ディルは頭を回し、スレイとフェイは首を縦に振った。

(おいおい、どうなっているんだ……。聖獣をテイムしているリルルはいったい何者なんだ)


 聖獣にそこにいてくれとお願いし、リルル達を呼びに行く。


「大変だ。ディル達が」

「えっ、何があったの?」

「あーあ、とりあえず来てくれ」


 ◆


 ディル達に会いに行くとリルルは戸惑う。リーンは何が起こったのかわからなくて、僕に問いかけた。


「何です? これは?」

「聖獣だよ。ディル達が聖獣になったんだ」

「よくわかんない。凄いんですか?」

「凄いもなにも、強力な味方だよ。リルル、テイムできている?」


「ちょっと待って…………大丈夫。テイムできてる」


 僕達は三体の聖獣を見続けていた。


「リルル、スレイは馬と大きさが変わらないけど、ディルとフェイに小さくなれるか聞いてもらえる?」

「わかった。聞いてみる」


 すると、ディルは蛇、フェイは大型犬の大きさになってくれた。それを見て僕はリーンに言う。


「これ、馬車に乗らなくても大丈夫だな」

「どういうことですか?」

「スレイとフェイに乗せてもらえばいいんだ」

「聖獣ですよ。乗せてくれるのかな?」

「リルルがいるから、何とかなると思う」


 そして、僕達は宿屋の支払いを済ませ、この町を出発した。


「あーし、モフモフに乗りたい」とフェイに乗ることを希望し、僕はリルルに確認する。

「リルル、大丈夫そうか?」

「大丈夫よ、あたいとラルフはスレイね」


 僕達はそれぞれ聖獣に乗せてもらった。


「おーー、すごっ。モフモフに掴まればいいっすか?」

「そう、しっかり掴まえてね。ラルフはあたいの前ね」

(リルル。そういって、胸を押し付ける気だろ、そんなサービスはいいから)


 聖獣に乗り、僕達は教国へと向かった。

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