なあ、お前、主人公だよな
第46話 ヤンとラルフ
王城から自宅に戻る。僕がまた旅に出るとディアに告げるとディアは涙目になった。
「いや、イヤだ。行かないでよぅ」
「……」
「私、一年間どんな思いで過ごしていたか、わかってよぅ」
「……」
「また、一人になって、二人の子供を育てるの。そんなのいやだよぅ」
「……」
「愛してるって、傍にいてよ。言葉じゃだけでなく、おねがい」
僕はディアの姿をみた。泣いていた。見たことのない泣き方だった。
「国王陛下に聞いてみるよ」
「そうじゃなくて、傍にいて……」
◆
「そうか。お主も事情があるのだな」
「はい」
「どうしたもんかのう。今のパーティーメンバーでエンチャントをかけなくても大丈夫なのか?」
「はい、問題ないです。あるとしたら僕がリーダーをやっていることです」
「そうか。今回、無理強いしてお主との関係性を悪くするのは良くないか」
「……」
「わかった。本当に必要になったら呼ぶことにしよう」
◆
国王に旅に出ないということを了承してもらい、そのことをヤンに伝えた。
「はっ? マジで言っているの?」
「あぁ、マジだ」
「オレにお願いして、それは無いだろ」
「……」
「って言っても、しゃあないか。オレにとって一年間なんて大した事はないが、ディアにとっては物凄く大事なんだろうな」
「……」
「まあ、ここに残っても意味がないから、行ってくる。ラルフ、一つ貸しな」
「ありがとう。ヤン。それと頼みがある」
◇◆◇◆
オレには命の恩人がいる。致命傷を負ったオレを見つけてくれた、ラルフってやつと、回復魔法をかけてくれたディアってやつだ。こいつらには感謝してもしきれない。だから何か言われても受け止められる。もっとも他の人間の指図なんか受けないけどな。こいつらは違う。
「ラルフとディアにわらわは魔族領に行くと伝えたのじゃ」
「あっそ、それはそれは」
「それでじゃ、お主ら旅について行くぞ」
「なんだそれ」
「帰れないからな。この世界で移動するしかないのじゃよ」
「勝手に行けばいいじゃん」
「お主と共に旅をする方が面白いじゃろう。でだ、わらわを紹介して欲しいのじゃ」
(はぁ、ラルフに相談するか)
オレはクルルに呼びかけられ、旅に同行すると言われた。なんでオレに言うんだよ。仕方がないのでラルフに相当する。するとラルフからは魔王だとバレないようにすれば一緒に旅をした方がいいとアドバイスをもらった。
◆
「みんな、こいつクルルって言うんだ。炎と氷が使える魔法使いだ。一緒に旅をしたいらしい」
人間どもにクルルが同行する旨をを伝え、オレはクルルに耳打ちをした。
「おい、クルル」
「何ぞ」
「お前、使うのファイヤーアローと
「なんでじゃ?」
「ラルフから、元魔王ってバレないようにしてくれと言われているんだ」
「そうか。ならば仕方あるまい」
(マジ全力出されたら、こっちが困る)
◆
旅は正直退屈だ。そうなんだよ、ラルフやディアがいないから張り合いがないんだ。
「クルルって、おいらと同じだね」
「ん? 何がじゃ」
「おっぱいの大きさだよ」
「それなら、わらわの方が大きいぞ」
「ちょっとだけじゃん」
「それより、お主は戦いでは何ができるじゃ?」
「基本的には物理攻撃かな。魔法も使えるけど、魔力消費するの考えないといけないし」
「そうなのか、わらわは魔力の消費とか考えたこともないぞ」
(勇者と元魔王が仲良く話して旅をしているのって、シュールだな)
◆
「ヤンさん」
「なんだエミル」
「この前、助け出してもらった、みんなと話し合っていたんですが」
「ほぅ」
「ヤンさんのファンクラブを作ったんです」
「はーあ、なんだそれ」
「ヤンさんは助けてくれた白馬の王子様で、守ってくれるナイトなんです」
「まぁ、やっていることはそうか。守りながら戦っているしな」
「ファンクラブ名は〔恋が叶うなら〕です。エルフのこと苦手ですよね?」
「そうだな、苦手って言うか、好きじゃないな」
「だから、今回の旅はエルフ達にファンクラブへの勧誘を兼ねているんです」
オレは頭を抱えた。
(なんで、そうなるかな。お前らエルフは馬鹿にしてくるだろ)
「いいですよね?」
「勝手にしろ」
「ちなみに会員番号、No.1は私です。今のところ会員は六人です」
「そっか」
「もっと増えていったら、ヤンさんはエルフのアイドルになりますよ~♡」
「馬鹿にされないってことか」
「まあ、そんなところです」
「あっ! おいらも入りたい」
「ダメです。エルフ限定です」
「エミルちゃん、いいでしょ? エルフだけなんてズルイよ~」
「ムネピコさん、会員ナンバーが一番大きい子の番号が会員数と同じようにしているんです」
(当たり前のこと言ってるな)
「エルフの人数なんだ。じゃあ、おいらNo.0になる!」
(なんなんだろうな、こいつら)
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