第31話 side オリバー

 俺は戦争から帰ってきて、夢である騎士団に入団することができた。

 訓練をしていたある日のこと、ネル王女が俺の所に来た。


「オリバー君、ちょっといいかな」

「うん、大丈夫だよ」


 俺は戦争での活躍が認められて、ネル王女との関係が深まることに、淡い期待を抱いていた。


「あのね、婚約破棄のことなんだけど無理みたい」

「えっ」

「力のある公爵家だから、無理だってお父様が」

「……」

「それで私、半年後には結婚するの」

「……」

「ごめんなさい。オリバー君、あなたの気持ちに応えたかった」

「……」


 ネルの頬には雫が流れた。そして、俺の恋は終わった。



 それからは我武者羅に訓練に打ち込んだ。朝練をし、そして騎士団の訓練。夕食後には型の練習。そう、今度の目標は、近衛兵になって、王女の盾になることだ。朝練。訓練。練習。その日常を繰り返していった。


 ◆


「オリバーくーん!」


 ある日のこと、俺の所にネル王女が駆け寄ってきた。


「どうしたんですか? 王女様」

「報告があるの」

「??」

「オリバー君、特命部隊だったよね」

「そうだけど」

「そのときに二人皇女様が来たでしょ」

「うん、そうだね」

「私の婚約者、上の皇女様と婚約することになったの」

「ん?」

「だぁ、かぁ、らぁ、私の婚約者が婚約破棄して皇女と婚約」

「えーっと」

「それで、私、次の婚約者探しているの」

「それって」

「うん。今、お父様とカーン伯爵様が話し合っている。一緒に客間に来て」

「え、え、え、訓練……」

「ほら、いくよー」


 俺はネルに引っ張られ、客間へと行く。


 ◆


「失礼します」


「よっ。オリバー」

(親父、国王陛下の前です)


「オリバー君、そこに座りたまえ」

「はい、陛下」


 ネルはニコニコしている。


「オリバー君は伯爵令息じゃよな」

「はい、そうです」

「慣習に基づき、ネルはな。公爵か侯爵の令息と婚約をするのだが、お主の戦争での活躍があることで、わしは親に説明できる」


「それって」

「オリバー君、娘のネルと婚約してくれ。ちなみに拒否権はない」


 俺は驚いてネルの顔を見る。


「へへぇ、報告おわり!」


 ネルが抱き着いてきた。そして国王陛下から、


「じゃあ、今日から王族の礼法と歴史を学んでもらうぞ」

「はい!」

「そして、騎士団の訓練はいつも以上にしてもらうからな」

(国王、スパルタですね。でも、俺はへこたれませんから)

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