第35話 side エミル

 うちにはダークエルフの知り合いがいる。


 初めて会ったときには、あの人は「殺していいか」って仲間の人に言っていて、怖かった。ここで死ぬんだと。でも仲間の人があの人を止めてくれて、私は生き延びることができた。

 そして、気づけば奴隷商から逃れることができ、あの人達には感謝しかない。


 うちは一度、森に帰ることができたのだが、また捕まってしまい、今度は奴隷商ではなく、悪い男のもとへ。着いた先は知らない場所。逃げ出したとしても、お金が無い。寝る所がない。


 うちは男の部屋に連れていかれ、男の目が光った。これから、うちの身に降り注ぐことがわかってしまった。嫌だ。

 だけれども男の力には抗うことができず、すぐにやられてしまった。「痛い、痛い、痛い」と叫んだが、乱暴に扱われ続けた。こんなに痛いのは嫌だ。

 次の日も、男に乱暴にされた。痛い。泣きながら終わるのを待った。これがこの先続くのか。死んだ方が楽になれると思ってしまった。

 そして、次の日に飽きたからと言われ、うちは娼館に売られた。

 

 逃げ出すためにもお金が必要だった。痛くても、仕事をやるしかなかった。誰を相手にするのか、とにかく痛いんだろうな、そう思うと怖くなった。ここに居なさいと言われ、先輩方は次々と指名された。そして、あの会ったことのあるダークエルフが来た。

 嫌。うちは恐怖におののいた。でも、最悪なことに指名されてしまう。


 とにかく、場を和らげなきゃ。彼の名前を思い出し、聞いてみる。ビンゴだ。そして、うちは覚悟してベッドに腰かけた。これから襲われるだろう、そう思っていたら、手を出さないと言われ、少しほっとした。その後すぐに、殺すと言われたけど冗談だよって。

 話をしてみると、とても楽しく、時間が過ぎるのを忘れた。驚いたのは彼がたくさんの女性を抱いているということ、気持ち良くさせるのが、つまらなくなったと、だから別に求めていないと。


 そして、うちは身受けの話をした。悪い男が言うには、うちには白金貨一枚の価値があると。金貨百枚。銀貨一万枚だと。無理だろうな。オーナーが白金貨五枚って言ったとき、あぁやっぱりダメだと。

 そしたら、躊躇することもなく、彼は白金貨五枚を出した。うちは彼のものとなり、そして、かたきも討ってくれた。


 すべてが終わり、彼のもとで安心して暮らせると思った。でも、彼はそのまま去ろうとするので、「待ってください」と引き留めた。

 うちには彼が必要だったのだ。ぶっきらぼうだけど、笑顔をみせる。そんな彼と一緒に居続けたい。


 そう、うちは恋をしたのだ。


 でも、うちの周りにいたエルフのみんなは、とにかくダークエルフを馬鹿にしている。

 だからダークエルフはエルフのことを忌み嫌っている。「何でうちエルフなんだろう」


 うちの想いは実ることはないのだろう。

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