ホントにマジ、何してるんですか!

第50話 対魔王

 僕は、この間のエルフの任務がどうなったかをサルに聞いた。エルフの保護については、やるだけのことはやって、上手くいったそうだ。まぁ、リーンとヤンが戦って、リーンは捕虜、サルとは離別。かつての仲間がそんなことになったとは。聞いたときには耳を疑った。

 僕とディアは週に二回、リーンに会いにいっている。彼女は旦那のリュークのことを気にして、食事も喉が通らないそうだ。


「瘦せていくね」

「うん。リーンちゃん、可愛そう」

「そうだよな。僕達が何かできることはないのかな……」


 リーンと面会した、ある日の帰り道。僕の目の前に手紙が落ちてきた。

(なんだろう)


 不思議に思い、手紙を開けるとエミルからだった。風の精霊シルフ達にお願いして、手紙を届けてくれたようだ。

 中身は、ヤンと共にザビンツ帝国の帝都にいると。そして、リュークリーンの旦那に僕達の住所を教えたそうだ。

(ヤンはザビンツ帝国で穴倉探していたしな)


 そんな生活をしていると、僕は国王陛下に呼ばれた。魔王が復活したので、何か良い策がないか、勇者パーティーと話し合いをしてほしいと。


 ◆


「サル、久しぶり」

「ラルフ、助けてくれ」

「どうしたの?」

「魔王討伐には、明らかに戦力が足りない。ヤンにも勝てないし」

「そうだね。ヤンを敵に回してしまうのは悪手だね」

「はぁ」

「まあ、これから国王と話し合うわけでしょ。現状を理解してくれると思うよ」


 ◆


「集まってくれて、ありがとう。これから魔王の復活についてどう考えればいいのか。知恵を借りたい」


 メンバーは僕とディア、ムネピコ、サル。そして王国直属の騎士団長がいる。僕は初めに自分の意見を述べた。


「陛下、結論を言っていいですか。討伐に行かないのが最善手です」

「ほう。それは何故だ?」

「理由は三つあります。一つは僕達の力でどうにかなるものではない」

「ほう」

「もう一つは、魔王が人間に危害を加えるのか。少なくとも僕が生きている中では、そんなことは無かった」

「今のところはそうじゃな」

「最後の一つは、僕とディアとリーンは魔王と相対峙したことがあり」

「「「……」」」

「魔王が現れれば、僕達は話し合いができる」


 その場にいる全員が唖然とした。


「他国はどうか知りませんけど、うちは派兵しない方がいいです。僕やディアがいますし」

「そうか、では我が国は討伐に行かないと。軍事協力を求められたら断ると」

「はい。ムネピコ達はどう?」


「おいらは、勇者だから、魔王と戦うべきだと個人的に思う」

「サルは?」


「ラルフが嘘をついているとは思えなんからなぁ。魔王と話し合いができれるんなら、戦いは避けた方がいいな」


「えーー。おいら達、頑張ってきたじゃん」

「ムネピコ、お前は単独でヤンに勝てるのか?」

「……、無理」

「ヤンに勝てないのに、魔王と戦うのは無謀だよ」

「……」


「結論は出たな。討伐にいかないことにする。これは王命だ」

「陛下。一つ、お願いがあるのですが」

「なんだ、ラルフ」

「牢屋に閉じ込められいるリーンを僕に預けて欲しいのです」

「勇者パーティーに反逆する可能性があるだろ」

「はい。その可能性はあります。リーンによく言って、聞かせますので」


 ◆


「リーン、昨日ぶり」

「いつもありがとう」

「食べることできている?」

「……」

「今日は報告があって来たんだ。昨日の夕方、リュークから僕に手紙が届いた」

「!!」

「リーンが無事かどうか。知りたいんだってさ」

「ありがとう」

「それともう一つ。牢屋から出られるよ」

「えっ」

「国王にお願いしたから、大丈夫。ここから出て、リュークへ手紙を出して、食事もしっかり摂ろう」


 リーンは泣いてしまった。


 ◆


「ただいまぁ」

(誰もいないけど)


「おう、待っておったぞ」

(なんでいるの魔王? 僕の家に勝手に入ってきて。魔族領にいるんじゃなかったの?)


「なんでいるの? なにかあったの?」

「いやな。アテネとの感動の別れに立ち会ったことを思い出してな」

「あれ? ちょうどリーンもいる」

「昔話をしたかったんじゃよ」

「ちょっと待って、天界と行き来できるようになったの?」

「そうじゃ。アテネが神族に謝り続けてくれたからな」

(女神様。頑張っているんですね。こんな姉をもって大変だろうに)


「そうなんだ」

「でな、お前さんのパーティーの原点を知りたくてな」

「あぁ、ソレトの町か」

「じゃあ、いくぞ」

(魔王。いろいろツッコミどころがあるんですけど)


 そして、僕達はソレトの町に行き、そして帰りにリュークのいる帝都に行くことにした。


 ◆


(で、なんだろうな。何故、僕達家族四人とリーンは、天界にいるのかなぁ)



「魔王、これって大丈夫なのか?」

「大丈夫じゃよ。バレなければ。じゃあ、降りるぞ」


 ◆


「ほら、簡単じゃろ」


 僕は周りを見て、すぐにわかった。


「あのね。魔王じゃなくてクルル」

「なんじゃ」

「ここね。ソレトじゃない」

「??」

「ヘンダーソンって言うところだよ」

(だって、白い砂浜と透き通る青い海。向こうに見えるリゾートホテル。ヘンダーソンでしょ)


「間違ってしもうたか。もう一度いくぞ」

(はぁ、まあいいか。久しぶりに来たし)


「ラルフ、ラルフ」

「どうしたの? クルル」

「天界に戻れない。どうやらバレたらしい」

(ですよね。神は行動すべて、お見通しですから)

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