第2話 ふたりで飲み屋へ

 ギルドの出口。野次馬が集まってくる前に、男達からお金を巻き上げ、服を切り破る。そして、彼らを放置してギルドをあとにした。


(まぁ、裸体が倒れているわけだけど、知らない)


「だいぶ、お金に余裕ができたね」

「うん。あのさぁ、もし良かったら、あたいとパーティー組んでもらえない?」


「えっ! いいの?」

「うん。状況判断が早いから助かるの」


「じゃあ、よろしくね。リルル」

「こちらこそよろしくね。それでさ」


「なに?」

「あたいの部屋、二人部屋なの。お金大切にしたいし、一緒に来ない?」

(宿屋とって無いからなぁ。でも、男女で大丈夫なのかなぁ)

「あっ、気にしてるでしょ。大丈夫、この子達があたいを守ってくれるから」

(なるほど)

「わかった。世話になるよ」


 そう言うと、彼女は笑顔で握手を求める。

「よろしくね。相方」


 喧噪の中、二人で町を歩き、ディル達の食べ物を買っていく。そしてリルルが泊まっている宿屋に着いて、二階に上がり、部屋に入って荷物を置く。


「ラルフって荷物が多いよね」

「そうだね。ポーション類と、武器やお金、それと着替えかな」


「そんなに持ち歩かなくても」

「着替えは大した量無いし、宿屋も一泊が多いし、これがベターなんだよ」


「ふーん、そうなのね。それでさ、ラルフはお酒呑む?」

「僕は飲まないな。クエストに影響が出るかもしれないから」


「ちぇっ、つまんないの。一緒に呑もうと思ったのに」

「ははは。そういえば、食事って付いているの?」


「ううん、いつも、湯あみしてから、外で呑む」

「そうかぁ」

「じゃあ、あたい湯あみしちゃうね」


 リルルはそう言って、服そして下着も脱いだ。僕は驚いて目を見開き、慌てて背を向ける。

「ちょ、ちょっと待って」

「何が?」

 リルルはニターと笑い、手で胸を持ち上げる。

「いや、あの、おっぱいが丸見え……」

「いいじゃない。減るもんじゃあるまいし」

「そうじゃなくて……僕部屋から出るね!」


 僕はリルルを見ないように、急いで部屋を出た。

(ちょっと、あの子、感覚が変だな)

 一階の食堂で待っていると、湯あみが終わったリルルが僕を捕まえて


「よし、呑みにいくわよ」

「えっと、湯あみしてないんですが」

「呑まないんだから、部屋に戻ってからでいいでしょ。早く早く」

「ちょ、ちょっとー」


 リルルに連行されて、二人で飲み屋に行く。ディル達はお留守番だ。十五分程で飲み屋に着いて、店の中に入る。二人で楽しく話なしながら、注文した飲み物を待った。


「「かんぱーい」」


「ありがとね。声かけてくれて」

「まぁ、僕も困っていたから」


「ホント、助かったわ。何していいか分からなかったし」

「僕もそうだよ。エンチャンターって仲間がいないとキツイし」


「そうね、どう? これからクエストやっていけるかしら」

「正直、今の戦力じゃ、今日みたいなことしかできない」


「そうかぁ、どうしようね」

「ん?」


「どうしたの」

「いやね、人間と武器にしかエンチャントしてこなかったけど、あの子達にエンチャントの効果がでれば」


「そういうこと」

「うん、戦力がアップする」


 僕達はお互いのことを良く知らなかったので、最近あったことを話し合い、リルルはお酒が入って上機嫌だ。


「ちょっと、飲み過ぎじゃない?」

「こう見えても、あたい酒豪なの」

「そうかぁ、呂律が回らなくなったら、止めるからね」

 それから一時間経って僕は呆れていた。


「結局、潰れてるじゃん」

「そんにゃこ、にゃい、もとのみゅ」

「あーあ、ダメだ」


 酔いつぶれたリルルに肩をかし、飲み代を支払って、外に出る。


「らりゅふ、おんぶぅ」

「はぁ」

「おんぶぅ」

「あいよ。ほら、背中に乗って」


 リルルは僕の首に腕を絡ませ、背中にひっつく。


「らりゅふー」

「持ち上げるからしっかり捕まって」


 僕はリルルが落ちないよう、後ろ手に組む。

(手から伝わる感触といい、背中にくる強烈なものといい、女の子って柔らかいんだな)


 リルルを背負い、宿屋へと向かう。

「すーぅ、すーぅ」

(寝てるのかな)


 そして宿屋の二階の部屋に戻り、リルルをベッドに寝かす。ディル達は心配そうにリルルを囲んだ。

 僕は湯あみをして、ベッドに横たわる。

「おやすみ。リルル」

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