第37話 闇神官
「遂に出国か――早いもんだな」
「そうだな。サル」
「しばらくお別れか」
「そうか、まぁ、また来るよ」
「ラルフ、戦場には行かなくていいの?」
「うん。あまり思い出したくないし、負のオーラがたくさんあると思うから」
(特に三日も消えない炎だなんて)
入国手続きをする為、順番待ちの列に並ぶ。しばらくして、ようやく僕達の番になり、受付の方に話をする。
「巡礼の旅で参りました。通行料はどのくらいかかりますか?」
「何人ですか?」
「六人です」
「六人だと最低銅貨三百枚のお布施を頂ければ」
僕は銀貨三枚を取り出し、受付の方に渡す。
「これが滞在証になります。無くさないよう気をつけてください」
「わかりました。ありがとうございます」
僕達が教国に入国すると、ムネピコがみんなに呼びかけた。
「おいら、神殿に行きたい!!」
ムネピコのこの一言で、僕達は総本山に行くことになった。総本山へはここから一週間の行程。当初のルートとは異なるが、まあ良しとしよう。巡礼者と出会うなどして、予定通り一週間後、総本山の麓へと辿り着いた。
「懐かしいね。ラルフ」
「そうだね。あの時はディル達のお陰で上手くいったんだよな」
リーンとそんな話をしながら、僕達は総本山を登って行く。記憶を頼りに神殿の場所を探していたら、僕はびっくりしてしまった。
(スゲー。神殿が直っている!)
「おいら、中に入りたい!!」
ムネピコが興奮状態で神殿の中へ。僕達はそのあとに続き、神殿の中に入った。
中に入り大聖堂に行く。そこには荘厳な雰囲気が漂っていて、思わず僕は感動してしまった。ディアを救出するときは、助けることで頭がいっぱいで、そんなことを感じる余裕はなかったから、今回来れて本当に良かった。
「改めて見るけど、凄いな、サル」
「おう、わい初めて見たけど、ステンドグラス綺麗だな」
「?? サル、ここで洗礼受けたんじゃないの?」
(あっ! 教会でできるか)
「洗礼? なんだそれ?」
(闇医者ならぬ闇神官だな。よく勇者パーティーに入れたな)
サルと話しているとムネピコが目を輝かせながらこちらに来る。
「ラルフさん、あそこに、すっごい炎があるよ!!」
「ムネピコ、あれね。聖火って言うんだよ」
「聖火? そう言うんだ。おいら初めて見たよ。ラルフさん、物知りぃー」
「木の曜と風の曜の日に見れるんだよ」
僕がキョロキョロと周りをみていると、向こうの方から豪華な服を着た男がやってきた。
「そこの方、どうか寄付を……」
「あぁ、これで」
僕は持っていた銀貨を渡す。
「ん? そなたどこかで」
「……」
「いえ、何でもないです。お気になさらずに」
(いや、あなたと会っています。フェンリルと共にいました)
寄付をし終えた後、黄金色の十字架のところに行くと、ヤンが隣にきた。
「なあ、ラルフ、あのガラス壊していいか?」
「やめてくれ。弁償するのが大変だ」
「弁償? なんだそれ、面白そうじゃん」
(ここに連れてこなければよかった)
神殿の中を巡り、充分楽しめたところで外に出た。
「たのしかったぁー」
「ムネピコは初めてだったんだっけ?」
「ううん。十二回目」
(十二回目で初めて聖火を見たのか――すごいな)
僕は総本山を降りていき麓に辿り着いた後、これからの行程をみんなに説明する。その日から二週間の馬車の旅を経て、僕達はオーラン帝国に入国した。
「じゃあ、次はヘンダーソンへ向かうよ」
「わーい! 海だ、海だ、海! おいら楽しみだー!」
「わいは水着巨乳を見るのが楽しみだけどな」
(サル。ツッコむのが面倒だよ、もう)
そして、僕達の旅はヘンダーソンへと続く。
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