巻き込まれちまった。何でそうなるの!

第26話 へへっ♡魔力交換しよ♡

 時はリリルが天界に帰った二日後に遡る


 僕とディアとリーンは失意の中、ポートオフィスに留まったままだった。特にディアとリーンはショックが大きいみたいだ。神託によるパーティーの目的も達成され、次の目標を考えられずにいた。


「シケてんじゃねぇよ。世界中周って戦えばいいだろよ」

「そうだけどさぁ」

「ラルフ、号外がきてる。見てみて」


 僕は号外を受け取り、タイトルに驚く。


『魔王が倒された。いったい何処のパーティーが!?』


 記事を見ると、各国の占術師が魔王の気配が消えたことを王に伝えたそうだ。

 各国は、我が国の派遣したパーティーが倒したと主張している。そして凱旋パレードもやるらしい。

 事実かどうかを調べるのに名乗り出たパーティーの討伐までの足跡を調べていくと書いてあった。

 名乗り出た各パーティーの足跡を記録し、矛盾点を洗い出していくと。



「人間って馬鹿なのか? 魔王を倒す実力も無いだろ」

「そうだな」

「名乗り出るのか?」

「ディアのことを考えると名乗り出ない方がいい。陰謀に巻き込まれるから」

「ふーん、悔しくないの? 手柄を取られて」

「いや、倒したんじゃない。魔王は天界に戻ったんだよ」

「あっそ」

「魔族達が次の魔王の席を狙って内戦がおこるよ」

「へぇ、じゃあ、ここに残って次の魔王を倒す気か?」

「ルルミアに行こうかなって思っている。オリバーに伝えたいし」

「いいんじゃね。今までの旅、面白かったから、これからもオマエらについて行くつもりだし」


「私も行く」

「あーしも」

「それじゃ、旅に足りない物を補充しにいこうか」


 ◆


「ねぇ、ラルフ。ありがとうね。私のこと考えてくれて」

「恋人なら、そうでしょ」

「不安だったんだ。討伐パーティーメンバーには貴族からの婚姻話がたくさん来るって思っていたから」

「あぁ、そうか。言われてみればそうかな」

「ラルフは貴族になりたい?」

「なりたいと思わないし、エンチャンターには話が来ないよ」

「……話が来たら? 婚姻の話が来たら、側室をたくさん作ることができるよね」

「そうだね」

「私はイヤ。取られた感じがするから」

「僕が側室取ると思う?」

「……。思わないけど。不安……」


 ◆


 ルルミアの王都へは馬車二ヵ月ほどの距離だ。大幅戦力ダウンだが。道中、魔獣と遭遇しても大丈夫だろう。ヤンの力は頼りになるし、リーンがアクアヒールを覚えたから、攻守に活躍できる。それにエンチャントをかければ、さらに安定する。ディアの攻撃力もわかったし、問題ない。


「じゃあ、行こうか」


 僕達の馬車の旅が始まった。途中、帝都により観光するつもりだ。


「まだ、穴倉、生きてっかな」

「知らないけど、また見つければ?」

「まぁ、誰かいたら、刎ねるけどな」

「笑えない」


 ◆


「ラルフさん、あーしのこと抱いてくんないかな」

「だ、ダメです。リーンちゃん!」

「あーし、子供欲しくて、ラルフさんの欲しいんだけど」

「リーンちゃん、他にも男はたくさんいるでしょ」

「そうですけど、ラルフさんのが欲しいです。子供の面倒もちゃんと見てくれそうだし」

「リーンちゃん! それ不倫です!」

「えっ、まだ結婚してないですよね? 不倫じゃないですよ」

「そうだけど……」

「じゃあ、決まりね。ディアさんだけ抱いているのは不公平だから」

「ダメです。ラルフは私のものです」

「へー、ラルフは物じゃないって前に言ってましたよね。私のものですって物扱いですか?」

「!!」

「というわけで、ディアさん、よろしくね」


(聞いてたけど。なんか怖いな)


 ◆


 そんなこんなで、無事に帝都に到着。途中倒した魔獣の魔石は、ギルドにて換金する。


「だいぶ貯蓄できたね」

「そうだね。ディア、ザビンツ帝国の何処かに住もうかなとも考えているんだけど」

「どうしてここなの?」

「いやね、教国と隣接していない国の方がいいかなって」

「そこまで考えてくれているんだ。ラルフありがとう」

「いえ、どういたしまして」

「じゃあ、お礼に今夜、魔力交換するね♡」


(お礼なのかな、まあいっか、素敵な時間だし、ディアが望むなら)


「魔力交換? なんですかそれ? あーしにも教えてください♡」


(知っているよな? リーン)


 ◆


 ヤンが探検している間、僕は宿屋の部屋で読書をしていた。


ガチャ


カチャ


「へへっ♡、ラルフさん」

「リーン、どうしたの?」


 リーンは僕に抱き着いて、胸を押し付けてきた。


「おい、リーン、やめなって」

「やめなーい♡」


 そう言って、僕はから離れ、服を脱ぎだした。


「まったく、服着て部屋に戻れよ」


 リーンは下着も脱ぎだし。僕に触ってきた。


「あれー、ここは反応してますねー。興奮しているんですかぁ?」

「頼むよ、リーン」

「ほれほれ」


 リーンの行動に、悲しいかな、体が正直に反応する。


「あーしのここ見てください。綺麗でしょ♡」



ガチャ

ドンドンドン


「ラルフ開けて、ねぇ開けてよ」

「今行く」


 僕は鍵を外しドアを開ける。


「な、な、なにこれ!」

「えっ」


 振り向くとそこには、四つん這いになって、女豹のポーズをしているリーンがいた。


「ラルフさーん、続きしましょ♡あれだけ触って途中でやめるなんて」

「不潔」


 ディアが部屋から飛び出したので僕は追いかける。


「待ってくれ!」


 そしてディアをつかまえた。


「離して!」

「僕の話を聞いて」

「イヤ、聞きたくない」


 ディアは涙目になっていた。


「ディア、誤解だって、リーンはよく誘惑してくるのは知っているでしょ?」

「でも、あんな」

「だから! 僕は人生でディアしか抱いてない!」

「えっ、ホント」

「そうだよ」

「ホントに信じていい?」

「あぁ、もし心配なら、神様に、いや、アテネ様に聞けばいい」


 ◆


「リーンちゃんどういうこと?」


 リーンは正座している。


「……」

「無理矢理って、性別違ったら強姦未遂じゃないの?」

「ズルいです」

「えっ」

「ディアさんだけって、ズルいです」

「……」

「あーしもしたいし、してもらいたい」

「……」

「結婚してないですよね? じゃあ、ちょっとくらい良いじゃないですか!」

「……」

「あーしは、あーしは……」

「……、ねぇ、泣かないでよ。リーンちゃん。それじゃ私、悪者みたいじゃ……」



ガチャ


「ん? 何してんの? 何かあったんかい?」

「「……」」


「ふーん、なんかよくわからないが、やっぱり人間って面倒なんだな」

「「……」」


「お前ら、部屋に戻ったら? ここオレとラルフの部屋だし」

「「……」」

「はぁ。めんどくせ」


 そう言って、ヤンはサーベルを持つ。


「「!!」」


「いいぜ、ここで戦っても」


 ヤンは器用にサーベルを回す。


「いくんか! 行かないんか!!」


 ディアとリーンは慌てて部屋に戻った。



「何してんだよ」

「すまぬ」

「おめぇが、リーンに甘いからこうなるんだろ」

「……」

「まったく、ちゃんと拒否しろ。ディアもかわいそうだろ」

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