第43話 性奴隷

 僕達は帝都を再出発し、ルルミア王国を目指す。旅の途中、魔獣が出ても。ムネピコは簡単に魔獣を仕留めることができるようになった。

(サルもハイヒール覚えたし、ムネピコもだいぶ育ったな)


 そして、オーラン帝国、第三の都市クルイドに到着した。この都市は奴隷の取引、戦闘奴隷の育成、性奴隷目的の移入者など、奴隷によって発展した都市だ。


「ラルフ、この町には東奴隷会館、西奴隷会館、北奴隷会館があるんだぞ」

「へぇ、サルってここ詳しいんだ」

「あぁ、ビスビオ王国では悪名で有名だからな」

「そうか。でもなんでビスビオ王国で悪名って広がっているの?」

「自国民の不満の矛先を、他国に向けさせるだよ。そうすることで、内政の安定化を図るんだ。それを狙って国が情報を流している」

(サルすごいね。宰相になれるよ。きっと)


 そんな話をしていると、ふと背後に人の気配を感じた。そして振り向くと、気配があったのに誰もいなかった。


「ラルフ、つけられているぞ」

「そうか、ありがとうヤン」

(気配はそういうことなのか)


「やっていい?」

「街中だ。頼む」

「はぁ、言うと思った」

「みんな! 走るぞ」

「なぁ、狭い路地に行こうぜ」

「なんで?」

「そこで、殺せる」


 僕達は街中を走り、路地裏に向かう。


「行き止まりか」


 僕達は袋小路の中にいた。


「馬鹿め」


 一人の男がそう言いながらナイフを取り出す。他の三人も同様にナイフを持って脅してきた。


「そこのエルフを寄越せ、でないと――」


 ヤンが無慈悲に切り捨てる。


「ったく。馬鹿なのはどっちなんだか」

「うーん。襲われる理由がわからん。あぁ、エルフを寄越せって奴隷なのかも」

「まぁ。この街は危険だな。オレにとっては最高だけど」


 ヤンは血の付いたサーベルを拭いて、鞘に収める。僕達は周りに注意しながら、宿屋を探した。


「いらっしゃい、何人泊まるんだい?」

「六人で」

「四人部屋二つでいいかい」

「はい、お願いします」


 ◇◆◇◆


「ここにエルフが泊まっていないか?」

「あぁ、泊まっているよ」


「どこだ?」

「お客さん、冷やかしなら――えっ」


「早く教えろ、それとも死ぬか?」

「ひー」

「どこだ?」


「に、二階の奥の突き当り――」

「わかった。じゃあ死ね」


 ◆


「お前ら、女は全員確保しろ、無理なら殺して構わん。エルフだけは殺すなよ」


 ◇◆◇◆


バタン


「えっ、なに?」

「無駄な抵抗はするな。すれば殺す」


シュッ

シュッ


シュッ


「ラルフの言った通りだな」


 この町は奴隷会館も三つあるし危険だなと感じていて、僕は何か起こるんじゃないかと思っていた。なので、ヤンに女性陣の部屋に、いてもらうように頼んでいた。


「どこの奴隷会館の手先だろうね」

「面倒だから全部やっちまえばいいだろ」

「それさ、奴隷解放になるんだろうけどさ。前にあったニゲール伯爵の件でどこで保護するか。決まっていないと衣食住に困るだろ、文字の読めない人は、奴隷のままの方が生活できるのかもしれない」

「ラルフ、考えすぎだ。悪い奴は殺せばいい」

「そうかぁ?」


「大変だ。ラルフ」

「どうした? サル?」

「女将が殺されている」


 僕は急いで一階へ向かう、そこには大量の血があり、倒れている女将さんがいた。


「ヤン」

「ラルフ、どうした?」

「全部潰そう」


 ◆


 翌日、会館の営業時間を狙って、僕達は西奴隷会館へ向かった。


「いらっしゃいませ、今日はどういったご用件で」

「あぁ、奴隷のこと詳しく知りたいんで、納入業者とか教えてくれないか」

「お客さん、それは組合員しか、ダメなんですよ」

「おい。責任者を呼べ、話がしたい」

「ほほほ、お客さん、無理なこと――」


 ヤンが従業員に刃を向ける。すると中から屈強な男達が現れた。


「ここは正規の店です。刃を向けるなら殺すしかないですね」


 ヤンが男達の首を刎ねていく。


「ひー」

「責任者を呼べ」

「わ、わかりました」


 ◆


「私が西奴隷会館の館長です」

「名は?」

「名乗るほどではありません」

「奴隷達のお世話をしているものは」

「いますが、今日は生憎、暇をとっていまして」

「それなら……ヤン、奴隷以外いいぞ」


「そうこなっくっちゃ」


 ヤンは従業員を殺していく。ムネピコ達はは逃げ出した従業員を捕縛していく。


「終わったぜ」

「あぁ、次は北だな」


 ◆


「ほう、なんのようだ。性奴隷ならうちにはいないぞ」

「館長を呼べ」

「お客さん、冷やかしはやめてくれよ」

「ここはエルフを取り扱っているか?」

「そんなのいないよ。うちは人間だけだ」

「そうなのか。じゃあ、どんな奴隷がいるんだ?」

「うちでやっているのは戦闘奴隷と農奴がメインだよ」

「性奴隷は?」

「東と西だよ。紹介状書いてやっか?」

「大丈夫だ。金ができたら、また来る」


(東か……)


 ◆


「お客様、今日はどのようなご用件でしょうか?」

「性奴隷はいるか?」

「はい、います。よければそちらの女性達を買取いたしますよ」

「ヤン」

「あぁ、わかっている」


 ヤンは従業員の首を次々と刎ねていく。


「責任者を呼べ」


 ◆


「困りますよ、お客さん。こんな派手なことしたら命はないですよ」

「聞きたいことがある。この街の総元締めは誰だ?」

「北の館長ですよ。まぁ、もっとも生きて帰すつもりは無いですがね」


 そして、剣を持った男達が現れた。


(戦闘奴隷か……)


「お前ら、刃を向けない方がいいぞ。死ぬから」


 忠告を無視して奴隷達は一斉に襲ってくる。


(まぁ、ヤンが皆殺しするよ。っていうか、もうしたし)


「ひー」

「性奴隷は北では本当に取り扱っていないのか?」

「は、は、は、はい、貴族向けの性奴隷を、裏で」

「裏で?」

「初物やエルフなどを売りつけるんです。金になりますから」

「わかった――ヤン」


 東奴隷会館の責任者が言っていたことが真相だと思い、また北奴隷会館へ向かった。


「おぅ、どうした? ギャンブルで金でもできたか?」

「まぁ、そんなところだ。責任者を呼んでくれないか、エルフの性奴隷を買いたい、金はいくらでもだす」

「ははは、あいつらに聞いたんか。待ってろ。呼んでくるから」


 ◆


「おまたせしました。お客様、見慣れない顔ですが他国の貴族ですか?」

「ルルミアのカーン伯爵の使いだ」

「伯爵様ですね。わかりました。すぐにお持ちいたします」


 ◆


「おまたせしました。おい、突っ立てないで並べ!」


 すると、奥から五人のエルフが来た。


「当店自慢のエルフ達です。もちろん調教済みです」

「美しいな」

「はい、それとも、初物を呼んで来ましょうか?」

「その必要はない。ヤン」


 ◆


「ミッションコンプリート」

「お疲れ」

「こいつらも殺していいか?」

「お前なぁ、いくらエルフが嫌いだからってなぁ」

「そう言うと思ってたぜ」



「ありがとうございました」

「いや、そんなことないよ。それより、エルフって他にもいる?」

「いいえ、聞いたところによると帝国内では、ここに集められて……」


 エルフは泣いしまった。


「ち、ちょ、調教、を、受け、る、んです」

「そうか」

(ここが総元締めで、エルフ達に危害を加えていたのか)


「で、どうすんだよ?」

「あぁ、この間、エルフを助けたとき、国王とエルフの長とのパイプができているから王都まで連れていこうかと」

「はぁ? 宿代どうすんだよ」

「僕が出す」

「まったく、そんなことしても、エミルみたいにまた捕まるぞ」

「いいんだ。人間はエルフ達に嫌われている。せめてルルミアだけでも、友好関係を作った方がいい」

「面倒くせ。好きにしろ」


 そして、僕達は辺境の町リバーソンへと向かうことにした。

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