第52話 マナが無いならば

 ソウルダガーの魂は使い切ってしまった。


 更に、魔力は心許無い。


「おいおい、来ないのか?」


 彼は挑発してきた。


「今作戦考えてるんだよ」


「じゃあ俺から行くぞ!」


 再び風魔法で距離を詰めると、拳を前に突き出した。


 右手で空気を薙ぎ払い、炎上させた。


「炎の壁!?あっぶねぇな」


 壁の奥から声が聞こえる。


 攻撃の手を緩めたので、青い液体が入った瓶を出現させた。


 その時だった。


 魔法で壁を消し去り、一気に詰めてきた。


「残念賞!」


 彼が右手でフックを打つと、小瓶は木っ端微塵になった。


(嘘だろ!?)


 恐らくもう一度マナポーションを購入しても、破壊されてしまうだろう。


(何か方法は……)


 俺は迫り来る風を躱しながら、熟考した。


(そうだ!)


 俺は支配の鎖を売却して、新たなスキルを購入した。


(残高は……160万5000円か)


 これだけあれば、作戦を決行出来る筈だ。


「めんどくせぇな!お前!」


 腹付近に何かがある気がする。


(もしかして)


 俺はバックステップをした。


その瞬間、野を駆け抜ける風の音が聞こえてきた。


「おお!感鋭いな!」


避けなければ、恐らく死んでいた。


「それ程でも。そんな事より、和解しないか?報酬は全部渡す!」


「は?やっと面白くなったのに?」


「ですよねー」


 薄々気が付いていた。


 彼は純粋に戦いを楽しんでいるという事に。


「まあ、お互い自己紹介とかどうだ?」


「はあ!?意味わかんねぇよ!」


 結構時間稼いだな。


(お願いだ!効いてくれ!)


 俺が背中の弓を手に取り、引くと、無数の黒い矢が出現した。


「くそが!何でマナ残ってるんだよ!」


 彼は全力で防御する準備をした。


 それを見て、弓を放った。


(よし!勝てるな)


 強風域によって、矢は弾かれてしまっている。


 だがしかし、こうなる事は予想済みだ!


 俺は防弾盾と鉄で出来た小さな物を購入した。


 そして、鉄で出来た物のピンを引き抜き、相手に投げつけた。


 盾で全身を守り、成り行きに任せた。


 すると、花火の様な音が鳴り響いたので、盾の窓穴から覗いた。


(まだ生きてるのかよ!?)


嵐を作り、身を守っている。


 もう一度手榴弾を投げ込む。


(金さえあれば俺は最強だ!)


 マナに縛られない強力な攻撃。


 それが「なんでもショップ」の強みだと思う。


 窓穴から観察すると、爆発する寸前に風を強めている事が分かる。


(マナかお金、どっちが先に尽きるんだろうな?)


 もう一度投げ込んだ時、相手はダッシュする準備をした。


どうやら、マナの方が先に尽きようとしている様だ。


(間に合え!)


 しかし、願いは届かなかった。


 こちらに高速で向かってくる。


(ここまでは計画通りだな)


 俺は床に置いていたそれのピンを引き抜き、相手の少し前に投げた。


「もう見切ったぜ!」


 彼はそう言って一度足を止め、強風域を発生させた。


(よし!)


 俺は耳を塞ぎ、目を瞑る。


 すると、爆発音が響き渡った。


 を放つと共に。


 それを機に、設置した盾を乗り越え、一気に攻め込んだ。

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