第38話 気分転換

家に帰り、やるべき事を済ませると、冒険者協会に電話をかけた。


このまま黙っていると、罪悪感に押し潰されそうだからだ。




「A市のスーパーマーケット……。承知致しました。」


全ての事を伝えると、調査してくれる事になった。


起きてても仕方が無いので、眠りにつくことにした。




アラームの音。


俺は手探りで音源をさがした。


見付けると、それを掴んだ。


しかし、掴んだ頃にはもう停止していた様だ。


数分後に再び鳴り響くアラームを、画面を上から下へとスワイプし、鳴らないようにした。


(ダンジョン……は怖いから行かなくても良いか)


休みの日はいつもダンジョンを探していたが、今日はそんな気分では無い。


気分転換の為に、動画投稿サイトを見ることにした。


その時、通知が視聴するのを邪魔してきた。



kaedeからのメッセージです。

「ダンジョン行かない?A市にあるよー!」



俺は既読を付けずに無視しようとした。


しかし、このまま家でダラダラしたとしても、俺達が観察対象であることは変わらない。


(よし!行くか!)


俺はすぐに身支度して、いつもの駅に向かった。




広場のベンチに座って待っていた。


目立つ時計がそばにあり、この駅の待ち合わせ場所となっている。


スマホを弄っていると、知っている声が聞こえてきた。


「良介くん!待った?」


「今来たところだよ」


「良かったー。電車遅延しちゃって、遅れるかと思った!」


「ここら辺にダンジョンあるんだっけ?」


俺はアプリで調べる暇が無かった為、彼女に質問した。


「うん!2つもあるんだって!」


「へー!多いな」


「確か近くのタワーマンションと……ショッピングモール!」


恐らく昨日行ったショッピングモールだ。


まだ攻略されていないらしい。


あんな化け物が住み着いてるんだから、当たり前か。


「タワーマンションってどこの?」


俺はショッピングモールの話から遠ざける為にそう言った。


「ほら、あれだよ!」


彼女が指さす方向には、30階建てのビル……ではなくタワーマンションがあった。


富豪達は皆、そこに住んでいると聞いた事がある。


「魔王城みたいでワクワクするよね!」


「……まあ住んでる人からしたら災難だけどな」


「早く攻略してあげないと!」


「だな!」


昨日の事は悪い夢かのように思えた。

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