第39話 地獄ダンジョン

「でかっ」


それを見上げると、俺たちは開放されている自動ドアから入った。


エントランスには、数組が高級なソファーに座っている。


きっと、俺たちと同じく冒険者だろう。


「こんにちはー!ダンジョンの入口ってどこですか?」


コミュ力の高い彼女は、二人組に質問した。


彼らは疲れ果てた様子だ。


「そこの道を進んですぐ右に曲がるだろ。そしたら、エレベーター見えるから、それで15階に行けばいい」


「エレベーターが入口なんですね」


「いや、1505号室が入口だ。地獄みてえな場所だから気を付けろ!」


「俺たちにはキツかったから、秒で引き返してもたわ。 都内におるAランク冒険者が来てくれるらしいから、お前らも待ったら?」


彼らの言動から、ダンジョンの難易度が高いが分かる。


「一旦行ってきます!やばかったら引き返しますね」


「健闘を祈る!」


「じゃ、行こっか!」


俺たちはダンジョンに向かった。




骨折した時に何度か乗った、学校のエレベーターとは比べ物にならない程豪華だ。


(ここまで快適だと、逆に落ち着かないな)


まるで、テストが始まる前の様に緊張している。


「ねえ、良介くん。今回のダンジョンどんなのだろ?」


「んータワーマンションだよな?無限に続く廊下とか?」


「おー!ゲームみたいで良い!」


この世界は「ゲームみたい」では無く、本当にゲームなのかもしれない。


(はあ、少し考えすぎか?)


今この瞬間も、あの生命体に見られていると考えると、背筋が凍る。


「おーい!どうしたの?」


俺の事を心配しているようだ。


「いや、何でもない!それよりも、あれからスキルレベル上がった?」


俺は誤魔化してしまった。


「上がったよー!10分に一回無敵になれる!」


「お!すご」


そんな会話をしていると、到着のアナウンスが鳴り響いた。


「でしょー!」


俺たちは1505号室に向かった。




目の前には頑丈な扉。


「鍵掛かってたら入れなくね?」


「……あっ!でももしかしたら」


彼女はドアを引いた。


すると、予想通り開いたらしい。


恐る恐る中を覗いて見た。


「地獄……か」


灰で覆われた地表に、火山。


そして、溶岩の滝。


地獄という名に相応しいと俺は思った。

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