第28話 死神

 大鎌を持った骸骨は、落下しながら武器を振りかざした。


 彼らが回避すると、武器は床に衝突して破壊した。


(威力高いな。当たったら即死か?)


 良介がそう考えた時、金属の塊が骸骨に衝突した。


「いきますよ!」


「おう!」


 彼の掛け声を合図に、一気に畳み掛けた。


 良介は短剣を投げ、他の仲間は銃を乱射した。


 しかし、硝煙から現れた怪物は、無傷だった。


「な、なんやて!?」


 彼らは絶望した。


 だがその時、一人の男が呪文を唱えた。


「ファイアーボール」


 すると、彼の手からは巨大な火球が現れた。


 そして、それを投げつけると、怪物に直撃した。


 轟音を立てて爆発した。


(よし!)


 骸骨の左腕が宙に舞った。


「ソ、ソノ」


 骸骨が謎の言葉を発すると、首を曲がらないはずの角度に曲げた。


 ポキポキと首を鳴らし終えると、見えない速度で接近してきた。


(避けられない…か)


 彼は空中から盾を出現させて、身を守った。


 その瞬間、勢いに押されて1メートル位退いてしまった。


 クーラーが掛かっているのだろうか。


 冷ややかな暴風が彼の体を冷やす。


 しかし、すぐに温かくなった。


(ん?水か?)


 恐らく水では無い。


 彼は鉄の様な臭いによってすぐに理解した。


「え、え?」


「村井?」


 目を疑った。


 首から上が存在していない男を見て、到底信じられなかった。


(え?)


「良介さん!」


 恐れずに銃をリロードする彼女の声で正気を取り戻した。


(今は鎌を持ったスケルトン……。死神を倒さないとな)


 死神という名前が相応しいと良介は感じた。


(幸いネクロマンサーみたいに防御力が高い訳では無い)


 彼は大きく息を吸い込んで落ち着くと、こう考えた。


(確実に勝てる!)


 距離を取ってこちらを嘲笑っている様な死神に彼は火球を放った。


 死神は頭に目掛けて飛行する火球を、余裕で回避すると、再び接近しようとした。


(来る!)


 彼は床に手を置いた。


(壁を作るイメージで……)


 その瞬間、灼熱の壁が出現した。


(来ないのか?)


 一向にやって来ないので、彼は盾を投げ捨てて、リュックから黒い短弓を取り出した。


 そして、弓を構えた。


(準備万端だな!)


 彼は壁を消去すると、こちらを伺っている死神を発見した。


 すると、弓にマナを注入して無数の黒い矢を生み出した。


 矢が飛んでくる前に決着を付けないと死亡すると思ったのか、死神はこちらに飛ぶように近付いてきた。


(俺の勝ちだ!)


 死神は見えない壁にぶつかった様に見えた。


 その瞬間、黒い矢の雨が骸骨を襲った。


(マナ使い過ぎて頭痛い……)


「凄いー!!Sランク冒険者も夢じゃないですよ!」


「そうかな?」


 良介は微笑んでそう言った。


「た、助けてくれてありがとうございます」


「君がいないと死んでたよ」


「……」


 静寂が訪れた。


 その気まずい雰囲気を変えるかの如く、無機質な音声が鳴り響いた。



「レベルが上がりました」


「ダンジョンを攻略しました。攻略者に称号と報酬を与えます。また、帰還ゲートを生成致します」



(やっと帰れるのか……)


 彼がそう思った時、一人の女性が呟いた。


「パラサイト」

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