第27話 宿屋ダンジョン

「どういう事や!?」


「す、凄い…」


 次々に称賛の声が上がった。


「ひも状の物なら操作出来るんですけど、短剣に細いワイヤー付けて鎖鎌みたいにしました」


「糸使いってスキルですかー?」


「そうです」


 すると、予想通りで少し嬉しそうな彼女はこう言った。


「結構多くの人が持ってるけど、こんなに速く動かせる人は初めて見たー!」


「ありがとうございます」


 嬉しい気持ちを隠して次の敵を警戒し続けた。


 しかし、一向に来ないので、敵が来た曲がり角を曲がる事にした。


(青いローブだけ売るか。もし、この中にタクトみたいな奴がいた時に奥の手はあった方が良いから仕方無いな)


 皆が曲がり角に消えたので、彼は計画通りにローブを売却した。


(5000円か!)


 良介が合流すると、更に奥に進んだ。


「大丈夫ですかー?」


「はい!本当に死んでるか確認してました」


 彼は三秒で考えた嘘を披露した。


「し、慎重ですね。」


「だな。ところでここは奇妙な場所だね」


 異常な程長い廊下を見て、改めて異世界に来てしまったと彼らは実感した。


「中々ダルいダンジョンやな。さっさとボス倒して帰らな嫁さんが怒ってまう」


「村井さんの奥さん怖いんですか?」


 良介は興味本位に聞いてしまった。


「当たり前や。昨日なんて競馬で1万溶かしただけやのに、胸ぐら掴んできてよ……」


(7レベルに勝てる奥さんって、一体何者なんだよ)


 良介は心の中でツッコミを入れた。


「それは貴方が悪いですよー!」


「ぼ、僕もそう思います」


「え?皆そっち側なん!?」


 そんな会話をしていた時、客室の扉が急に開き、全ての扉からからスケルトンが現れた。


「またスケルトンだな!」


 良介以外は拳銃を取り出し、臨戦態勢を取った。


(え!?拳銃?)


 花火が散った様な音が数回鳴り響き、骸骨を次々に倒してみせた。


「氷の球来るで!避けろ!」


 残党の5体が同時に氷の針を放とうとしている。


 その時、すでに良介は見えない速度で骸骨に近づいていた。


 そして、短剣を即座に輝かせて全力で左から右に振った。


 すると、空間を切り裂いて爆裂音が鳴り響き、敵を全滅した。


「やっぱ頼りになるな!」


 スーツを着た男性は良介を褒め称えた。


「ダンジョン産の武器ですかー?」


「はい!条件付きで強力な一撃を放てます」


「い、良いですね」


 良介は手の内を明かして良いのかと思ったが、ここまで協力的だから大丈夫だろうと考えた。


「拳銃ってどこで手に入れたんですか?」


「ダンジョンに入る時だけレンタル出来るよ?確か免許取る時に言ってた気がするけど覚えてないかな?」


(あれ?そうだっけ?)


 彼は頭の中を一生懸命探してみたが、思い出せなかった。


「覚えてないです……」


「他にもナイフとか借りれますー!と言うかちゃんと聞いといて下さい!死にますよー」


 良介は苦笑いして、再び前進した。




「ナイスやで!」


 途中、数回接敵したが、5人で協力して敵をボコボコにした。


 そして、遂に彫刻が彫られた扉を発見する。


「ぼ、ボスですか?」


「光、ここで待機でも良いよ」


「い、いえ。ここまで来たなら僕も戦います!」


「じゃあ行きましょー!」


 今回も大柄な男が先陣を切って開いた。


 すると、不気味な音を立てて、豪華な宴会場の様な空間が現れた。


「なんや?誰もおらんな」


「来る!」


 良介が気配を感じてそう言った時、天井から大鎌を持ち、死神の様な見た目をした骸骨が現れた。

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