第51話 対人戦

 嫌な予感はしていた。


 俺はイメージしていた通りに、火属性魔法を使って、目の前を爆発させた。


(やったか?)


 そのように思えたが、黒煙から男性が現れた。


 爆発させる寸前、魔法で防いだようだ。


 彼は舌打ちすると、一つ助言してきた。


「報酬渡した方が身の為だぜ?」


「逃がしてくれるんですか?」


「それはどうかな!」


 説得するのを諦めると、一気に加速して、こちらに向かってくる。


(それはもう見た!)


 俺は右にステップして、回避した。


 暴風が横切る。


(殺さずに拘束する方法は無いのか……)


 そんな事を考えていると、腹目掛けてパンチしてきた。


 俺は手の平で受け止めた。


 お互い睨み合う。


「しつけぇな!お前!」


 その刹那、腹に激痛が走る。


(え?)


「残念!」


 風で切断したのだろうか。


 痛みによって、その場に蹲ってしまった。


「まじかよ!相手にならないな。次は?」


 目を合わせてしまった女性が腰を抜かす。


「い、嫌!私まだ生きたい」


「おう、そうか」


 そんな会話を交わした後、岩に固いものが衝突した音が響き渡った。


(何だ?)


 気になり、それを見てしまった。


(あっ)


 そこには女性の頭が転がっていた。


 痛みなど既に忘れていた。


(やばい。取り敢えず回復ポーション飲むか)


 俺はショップを開き、瓶を出現させた。


 気付かれないように飲み干すと、傷口が塞がった様だ。


「次は誰?」


 その間も誰かが死んでしまっている様だ。


(俺のせいだ……)


 俺が手加減したからだ。


 スキルや武器を全て使って戦えば、救えたかもしれない。


(最近、後悔ばかりだな)


 過去は変えることが出来ない。


 だけど……


 今は変えることが出来る!


さかき!俺が相手だ!」


「あ?お前生きてたの?もしかしてお前も文字化けスキル持ち?」


「そんな物は持ってねぇよ」


「へー。まあいいか」


 懲りもせずに魔法で加速してくる。


 俺は拳が当たる直前に、しゃがんで回避した。


 嵐が俺を襲う。


(喰らえ!)


 地獄ダンジョンで手に入れた鎖鎌。


 それを榊に絡ませると、呪文を唱えた。


「支配」


 相手は目を大きく見開いた。


 すると、思考を止めたかの様に、静止してしまった。


 その隙を逃さずに、ソウルダガーに魂を込めて、突き刺した。


「ガハッ!?」


 何が起こったのか理解していない彼は、後方の壁まで吹き飛ばされた。


(ここで終わらせる!)


 俺はもう一つの短剣に魔力を込めると、解放して三つの斬撃を飛ばした。


「痛えな」


(魔法で相殺した!?)


 彼は魔法で全てを消し去った。


(帰還ゲートで逃げるか?)


 俺の左には帰還ゲートがあった。


 しかし、逃走したら俺以外は殺されてしまう。


(それは後味が悪いよな!)


 俺はこの場で榊を殺す決意をした。

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