第50話 サカキ

 辺りはすっかり暗くなっている。


 空に浮かぶ星を見つめ、考え込んでしまった。


(楓……初めから騙すつもりだったのか?)


 答えなんてとうに分かっている。


 独りきりで感傷に浸り、帰路についていた。


 その時、携帯が震えた。


(もしかして……!)


 あるはずの無い事を考えると、スマホをポケットから取り出した。


(そりゃそうだよな)


 ただの広告メールだった。




(もう朝か)


 今日は休日だ。


(近くにダンジョンあるかな)


 俺は頭付近にある、スマホを手に取り、調べてみた。



 [依頼内容]

 ダンジョンの攻略

 [難易度]

 推定C

 [推奨人数]

 10人

 [獲得ポイント]

 10



(お!あるじゃん!場所は……)


 ダンジョンに行く為に、すぐに体を起こしてするべき事を終えた。




「いってきまーす」


 俺は灼熱の太陽に照りつけられながら、ダンジョンに向かった。




(今回も洞窟かな?)


 最寄り駅から二駅程。


 そこから5分位歩くと見えてくる公園に、それはあった。


(あの人達かな?)


 五人組を見付けると、俺はすぐに駆け寄った。


「おお!やっと来たか!」


 そこには見たことがある男性が居た。


「俺はサカキ!一応Aランク冒険者だ!」


「サカキさん!サインして!」


 どうやら有名人らしい。


(SNSで一度見かけたかもな。……いや!地獄ダンジョンであったか?タクトが恩寵を受けた人って言ってたな)


 恩寵を受けたから危険という理由は知らないが、警戒することにした。


「秒で攻略しようぜ」


 彼の掛け声に盛り上がる。


(いつでも戦えるようにするか)




「お前らは後ろで見とけ」


 前方から現れたゴブリンを見て、彼はそう言った。


 彼が前に飛ぶと、空中で一気に加速し、距離を詰めた。


(え!?)


 手を伸ばせばゴブリンに届く距離まで向かうと、彼は右手を前に突き出した。


 彼の拳は空を切った。


(そこまで強くないのか?)


 そう思ったが、ゴブリンは既に息絶えている。


(え?)


 彼は転がっている頭を蹴り、更に奥に進んだ。


(こ、怖……)


 俺は未知に対する恐怖を消す為に、鑑定してみた。



 名前:佐藤榊

 レベル:42

 種族:人間


 [称号]

 ダンジョン攻略者(25)

 フィールドボス攻略者(3)


 [所持スキル]

 風魔法

 繝ゥ繧、繝戊?蜍募屓蠕ゥ

 繝槭リ閾ェ蜍募屓蠕ゥ

 鬲泌鴨蠅怜刈

 騾乗?蛹

 [さらに表示]



(文字化けスキルが多すぎる……)



 俺達は何も言わずについていった。




「この扉の奥にはボスが居る。だけど何もしなくて良いから」


「はい!」 「分かった!」


(本当に良いのか?さかきに従って)


 彼が扉を開くと、いつも通り少し大きな空間があった。


 榊がそこに入ると、地面が揺れた。


「地震!?」


 後ろに居る女性がそう言った。


「ボスが来るだけ。黙ってろ」


 榊は背中のグレートソードを取り出した。


 すると、天井を突き破って大きなゴブリンがやって来た。


「ホブゴブリンか。雑魚だな」


 彼は魔法を使い、一気に距離を詰めて、ゴブリンの頭を一刀両断した。


(強!)


「はい終わり」


 彼は背中に剣を収めた。


 その時、無機質な音声が鳴り響いた。


「よし、皆報酬受け取ったか?」


「はい!」


 彼の問いかけに一同答えた。


「君もしっかり受け取ったか?」


 俺の目の前まで来て、そう言った。


「は、はい……」


「じゃ、今までありがとう!」


 彼は拳を突き出して来た。


(なっ!?)

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