第49話 特訓

「対人戦闘はね、様々な物を使う必要がある!」


「はあ」


 金曜日の放課後、タクトに呼び出された。


「というか、ここ何処なんですか!?」


「ここは傲慢組の本拠地。道場があって、訓練に最適なんだよ」


「へえー!」


 謎の組織の癖に、かなりお金を持っているらしい。


「ところで、俺訓練する必要ある?レベル上げた方が良くない?」


「君は対モンスターにいては、強いかもしれない。だけど、対人戦闘はどうだい?」


(前回、タクトに惨敗したんだっけ……)


「対人は頭使う必要あるって事か?」


「そうそう!スキルの使い方とかを熟知して、対人マスターになろう!」


「へいへい」




 スキルの使い方を模索していた時、引き戸がスライドした。


 すると、猫耳のパーカーを着た女性が現れた。


「こんにちは」


「お!今日は来たんだね」


「どうせ家でゲームするだけだから」


(どこかで見た事あるな……)


 見覚えのある女性の記憶を、頭の中から探した。


「もしかして、会ったことある?」


 彼女の問いかけで、完全に思い出した。


「あ!助けてくれた人?」


「え?二人って知り合いなの!?」


「うん。あの時は私も死ぬかと思ったよ」


 感情が無いかのような声で、そう答えた。


(神と戦った時、彼女が居なかったら死んでたな……)


 そんな感動の再開のムードをぶち壊すように、タクトが提案した。


「じゃあ早速戦ってみよう!」


「え、いきなり?私は自主練したいんだけど」


「俺も戦いたくない!絶対負けるし……」


「一回だけだから!」


「でも武器とか持ってきてないんだけど」


「殺傷能力の無い武器貸すから!」


 彼の熱意に負けてしまい、戦う事になってしまった。




 ルールはこうだった。


 攻撃を一度当てたら勝ち。


 スキルの使用は自由。


 ただし、殺意の持った攻撃と道場の意図的な破壊は禁止。


「じゃあ、位置について!」


「了解!」 「おけ」


「よーい……」


 静寂が訪れる。


「始め!」


 スタートの合図で、スキルを使用した。


「鑑定!」



 名前:桜田陽菜

 レベル:35

 種族:人間


 [称号]

 ダンジョン攻略者(11)

 フィールドボス攻略者(1)


 [所持スキル]

 空間魔法



(確かワープ出来るんだっけ?)


 その時、彼女は目の前から消滅した。


 俺は咄嗟に盾を購入し、後ろを振り向いた。


 すると、予想通り彼女がいた。


(防げるか!?)


 当たる寸前、相手の短剣を防いだ。


(え?)


 防御を解除し、反撃しようとした時だった。


 相手は武器を持っていない。


(まさか!)


 俺は横にローリングした。


「凄いね君。初見で回避出来るなんて思わなかった」


(一瞬で終わらせる!)


 俺は接近した。


 ここで使えるスキルは無いからだ。


 その時、手に持った短剣を投げてきた。


 俺は余裕を持って盾で防いだ。


 そして、至近距離まで近づくと、剣を左から振った。


(消えた……)


 恐らく後ろだ。


 俺は再び振り向き、攻撃の準備をした。


(え?)


 何処にも居ないと思った時、うなじに何かが当たった。


「陽菜の勝ち!」


(上にワープしてたのか!?)


 予想通り、完敗してしまった。


「鎖操るスキルじゃ無かったっけ?」


 盾を出したのを見て、不思議に思ったのか、問いかけてくる。


「あー。それ実は嘘で……」


 そう言えば嘘をついた覚えがある。


「良介はお金があれば、なんでも買えるっていうスキルだよ!」


「何それチートじゃん」


「そう……かな?」


「うん。相手を麻痺させる魔法とか買える訳でしょ?勝ち確じゃん!」


 彼女は少し興奮している様子だ。


「今まで攻撃力と面白さ重視で、対人戦に強いスキルは買って無かったんだよなー」


「え?そうなの?僕がお金出すから、実践的なスキル買おうよ!」


 タクトがそう言った。


「流石に人からお金貰うのはな……」


「考えといて!」


「お、おう」


 少し訓練した後、帰宅した。

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