第43話 提案

俺は見覚えのある顔を見た瞬間、この場を立ち去ろうとした。


「それで?本当にを受けた人がいたのかな?」


「勿論だとも。まあ、逃げられてしまったがな」


(恩寵……?何のことだ?そんなことより逃げるか)


その時だった。


「良介君。少しお茶しないか?」


タクトを見るなり、一歩一歩後ずさる俺を見て、そう言った。


(奈々さん達は俺の知らない事を多く知っている。メリットのある話だけど……)


一度騙されたと言うのに、その提案に同意しようとしてしまった。


「こんな人殺しと一緒に話なんて出来ませんよ」


俺はタクトを指さした。


「あの件は事故なんだよ!」


「どういう事だ?」


俺は言い訳する彼に問いかけた。


「実は……」


彼は語り始めた。




僕は奈々さんの言う通りにC駅の前で待機していた。


(アイツか?奈々さんが言っていた奴は)


奈々さんが言うには、ここに神の恩寵を受けた奴が来るらしい。


(……恩寵を受けた人は殺さないと)


そう思っていた時、男が段々接近してきた。


再びポケットに折り畳みナイフがあるか確認した。


「こんにちはー!タクトさんですか?」


「よろしく。武器の鑑定だから静かな場所に行こっか」


俺はコイツを殺すために裏路地に誘導した。




室外機の近くのホースから水が排出されている。


普段は気にならないのに、カラスの視線にさえ怯えてしまった。


(緊張しすぎかな?一旦深呼吸するか)


僕は大きく息を吸い込んだ。


そして、ゆっくり吐き出すと鑑定してみる事にした。



 名前:高橋良介

 レベル:7

 種族:人間

 [称号]

 なし

 [所持スキル]

 なんでもショップ[lv 3]

 トレジャーハント

 荳ュ霄ォ縺ェ縺


(奈々さんが言っていた事は本当らしいね。ここで殺すしかない)




「後は君も知ってる通りさ!」


「そんなスキル持ってないんだけど!?」


「前会った時には既に無くなっていたから、恐らく神の仕業かな?」


(またアイツの仕業か……)


「和解した事だし、カフェ行かない?」


「分かった。けど、和解はして無いからな!」


俺はついて行く事にした。

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