第42話 再開

 地面が揺れると共に、鉄を打ち付けた様な音が鼓膜を揺らす。


「あれ?絶対殺したと思ったんだけどなー」


 彼女は迷わずにこちらを見てきた。


「攻撃を開始するが良いか?」


「殺さない程度にお願いします」


「了解」


 作戦が決められる前に、楓は決着をつけようとしてきた。


「良介くんは優しいね。でもそんなことしてたら勝てないよ!」


 そう言いながら接近してくる。


 敵との距離は約15メートル。


(あのスキルの対策しないとな。麻痺……か?)


 俺はショップを開き、麻痺耐性と検索した。



「麻痺耐性」

[効果]

 麻痺に対する耐性を手に入れる

[クールタイム]

 なし



(予想通りあった!)


 確信は無いが、俺は15万円を支払って、そのスキルを購入した。


(これで効かなくなったら儲けものだな)


 その時、右前で刀を構えている女性は一気に接近した。


「麻痺魔法の事忘れてるのー?」


 楓は指パッチンした。


 しかし、彼女は止まらずに走り続ける。


「な、なんで!?」


 咄嗟にスレッジハンマーを横に振り、刀の間合いまで接近することを許さない。


 凛とした女性は冷静に回避し、刀を突き刺した。


 肩に直撃した……はずが、血のような液体をまき散らしながら破裂するそれによって、防がれてしまった。


(なんでスライムがいるんだ?)


 俺はそう思ったが、気にせずに鎖を操り、楓を拘束しようとした。


 鎖は獲物に巻き付こうとした。


「危な!」


 楓は横に大きく回避した。


 俺は楓が逃げる先に鎖を移動させた。


 その時、楓はハンマーで鎖を叩きつけた。


 チェーンが蠢く音が鳴り響き、床には粉々になった鎖があった。


(もう楓を傷つけずに捕らえる手段が無い……)


 その刹那、大きな隙を見せた楓に、刀を突きつける女性がいた。


「観念したらどうだ?」


「……」


 確実に勝ったと思い込んでいた。


 しかし、楓の足元に扉が現れた。


 理解が出来なかった。


 それはそのまま開き、楓を暗闇に連れ去った。


 俺も入ろうとしたが、扉は消滅した。


 地面は依然として灰で覆われている。


「君が無事でよかった」


「あ、ありがとうございます」


 これで良かったのか……?


 俺はそう思ってしまった。


「礼は良い。それよりも一旦ここを出よう」




 俺たちは来た道を辿った。


 そして、遂に扉が目の前まで来た。


 扉を開くと、いつも通りの光が降り注ぐ。


「脱出するが良いか?」


「はい……」


 彼女の言う通り、このダンジョンを後にした。


 外に出た時、誰かに声をかけられた。


「お疲れ様です。奈々さ……ってなんで君がいるんだ!?」


 見てみると、スーツを着た青年がいた。


(なんでタクトがいるんだよ!)

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