第41話 絶望
「何かの間違いだよな……?」
俺は現実だと思いたくなくて、意味の無い質問をしてしまった。
「鑑定なんて買わなきゃ良かったね」
否定をしないという事は、認めているということだ。
「た、戦うか?」
「さあね」
ハンマーを持ってやって来るのを見て、返事は「YES」だと言うことが分かる。
「鑑定!」
俺はハンマーを鑑定してみた。
権限がありません。
(どういう事だよ)
すぐに答えが分かった……が、ハンマーが迫り来るので、回避した。
「やっぱ強いね。良介くんは」
「強いって思うなら戦うの止めない?」
「それは無理!あの人に殺されちゃうから」
「そっか……」
本当にそうなのか?
それは「またバグってこの世界と繋がった時に会おう」と言っていた。
その言葉が真実なら、この世界に来る事は出来ない。
「あの人はここに来ること出来ないんだろ?そしたら戦う必要無いじゃん!」
「……直接殺される事は無いね」
そう言うと、再び近付いてきた。
楓は目の前まで来ると、ハンマーを横に振った。
俺はバックステップで躱した。
すかさず、追撃をしてくる。
敵だというのに、いつものように反撃する気が湧かない。
(好きだったんだ。仲間という存在が)
俺は回避を続けた。
意味の無い回避を。
「避けるばっかりは面白くないだって」
「そうか?攻撃を回避するだけでも面白いゲーム知ってるけど」
俺は説得しようとしたが、聞く耳を持たない。
その時、ハンマーが巨大化した。
そして、俺を叩きつけた。
全身が痛む。
骨でも折れたのだろうか。
俺は黒曜石の冷たさを全身で感じ取った。
「あー痛そう。ごめんね?」
彼女はゆっくり近付いて来る。
幸い、手は動くようだ。
俺は瓶を召喚して、一気に飲み干した。
「ゾンビみたいだね!」
再び動き出す俺を見て、そう思ったらしい。
「もう手の内は少ないだろ?降参したら?」
「まだ奥の手があるから!」
絶対防御の事だろうか。
そう思ったので、莫大な魔力を短剣に込めた。
そして、一気に解放した。
斬撃が楓に襲い掛かる。
衝突と共に、眩しい光が放たれた。
俺は耐えきれず、目を瞑ってしまった。
「隙だらけだよ!」
俺を砕こうとして、接近してきた。
その為、即座に回避出来るように準備をした。
その時だった。
何故か体が動かない。
(麻痺……か?)
「残念!私の勝ちかな?」
なんとか耐えようとしてみたが、遂に倒れこんでしまった。
横目で見える空は黒雲で覆われている。
体が言うことを聞かない。
足音が近付いてくる。
(ここで終わりなのか?)
無意味なことを考えているうちに、手を伸ばせば届く距離まで来たようだ。
「じゃあね。良介君」
ハンマーの影が地面に映る。
きっとここで終わりなのだろう。
槌が視界に入ってきた。
(死ぬときって時間の流れが遅く見えるんだな)
顔面が潰される寸前、ハンマーは停止した。
「楓?」
気が変わったのだろうか
「久しぶりだな良介君。私の事を覚えているか?」
(フィールドボスの時助けてくれた人かな?)
「えっと……」
名刺を貰った為、名前は一度見たはずだ。
だが、全く記憶に無い。
「まあ良い。これを飲め」
俺は念のために鑑定した。
「状態異常回復ポーション」
[レア度]
★★★
[説明]
全ての状態異常を解除できる。
俺は安全な物と分かると、すぐに飲んだ。
「あと少ししか時間を止められない。動けるか?」
「はい。ありがとうございます!」
「感謝はしなくてもいい。それよりも目の前の敵に集中しろ」
敵……か
胸にぽっかりと穴が開いた。
「では時間を動かす」
「了解です」
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