第44話 傲慢組へようこそ!

パンケーキはいつもと変わらない味がした。


口の中で溶けると、俺はため息をついた。


(過去を振り返っても意味が無いな)


彼らに質問することにした。


「奈々さん達はについてどのくらい知ってるんですか?」


「僕はあまり知らないね」


彼は女性の方を見ると、そう言った。


「目的しか知らないな。直接会ったことは無い」


(目的……?)


そう思っていると、彼女は続いて言った


そういえば、まだ言っていなかったな。奴の目的は……」


俺は固唾を飲んだ。


知りたいようで知りたくない。


夏の怪談の様に思えた。



「文明をリセットする事だ」



「奈々さん、それ言っても良かったんですか?」


「ああ、仲間になって貰う為には必要な事だ」


文明をリセット……か。


一回目のフィールドボスでの死亡者は推定5億人。


もし二回目があるとすれば……


考え込んでいる時、奈々さんに声を掛けられた。


「お察しの通り、フィールドボスが再び現れる。それが終わったとしても、3回目が来る。3回目は……」


一気に伝えても混乱してしまうと思ったのか、彼女は一度話し終えた。


「兎に角、君には強くなってもらう必要がある。協力してくれないか?」


一つ疑問が浮かんだので、聞いてみた。


「僕なんかより強い冒険者とか居ないんですか?」


世界を救うという責任。


俺には重すぎると思ったので、遠回しにそれから逃れようとした。


「現時点では居るが、君には伸び代がある」


(そう……かもな。当たり前だけど、一人でも多く戦った方が良いよな?)


俺は答えを出した。


「分かりました。協力します」


「感謝するよ。ほら、タクトも」


「あーはいはい。僕も感謝してるよ」


彼はスマホを弄りながらそう言った。




「明日の事忘れないでよ?」


「分かってますよー。でもダンジョンって危険じゃないんですか?」


「多くモンスターが湧いたりはするかもな。だが、観測者が直接戦う事は基本的に不可能だ。まあ、君が見たような事が起こらない限りだがな」


「ええ?超怖いんですけど」


「いいじゃん?強くなるためだし」


タクトは余裕そうに言ってくる。


きっと戦わないからだろう。


「駅集合で良いですか?」


「そうだね」


彼女の代わりにタクトが答えた。


「では、改めてへようこそ」


(……ん?協力するとは言ったけど、入るとは言って無くね?)


夏の暑さのせいか、一瞬思考が停止した。


その間に彼女達は去っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る