第35話 簡単な依頼

「よっす!良介」


「おはよー!」


8時12分、朝礼まではまだ時間があるようだ。


「なあ良介!俺も冒険者ライセンス取ってもいい事になったぜ!」


「まじ!?取ったら一緒にダンジョンいこうよ」


「おっけー!取れたら言うぜ!」


良介はそんな話をしながら、リュックから教科書を取り出した。




チャイムが学校からの解放を告げる。


今日は金曜日である為、一旦依頼をこなすのに専念できるだろう。


「良介!今日もダンジョンか?」


「んーどうしようかな。昨日死にかけたんだよな」


「そりゃ災難だったな!今日も行っとこうぜ!」


彼は冗談だと思い、笑いながらそう言った。


「まあ今日も探すだけ探すかな」


「頑張れよ!ところで、顧問の山崎が良介の事愚痴ってたぞ?」


「え?次行ったとき怒られるかな?」


「ワンチャン怒られるかもな!」


大雅は大げさに笑った。


「ま、まあダンジョン行ってくる!」


「り!また来週な!」


良介は異世界に逃げ込むことにした。




(今日は近くで依頼あるかなー)


毎日至る所でダンジョンは生成される。


しかし、都合よく近くで生成されるのは、偶にしかない。


その為、電車や自動車などでの移動が推奨されている。


(バイクの免許取れたらいいんだけどなー。うちの学校禁止だから、電車か親に送ってもらうしかないな)


校門から出ると、スマホの機内モードを解除した。


そして、冒険者用のアプリで依頼を探し始めた。


(お!ラッキー!今日は家の最寄り駅の近くあるじゃん!)



[依頼内容]

ダンジョンの攻略

[難易度]

推定D

[推奨人数]

5人

[獲得ポイント]

5



近くの木でセミが鳴いているせいで、いつもより暑くを感じた。


汗を拭うと、彼は駅に向かった。




風を切りながら、こちらにやってくる電車はクーラーの様に思える。


彼は電車に乗り込んだ。


(お!席空いてるな)


彼は横に誰も座っていない席に座ると、ポケットからスマホを取り出した。




「次はA駅、A駅です……」


そんなアナウンスが聞こえ、無理やり目をこじ開けて、電車を降りた。


降りると、リュックについているカード入れを手探りでさがし始めた。


一瞬で見つけてみせると、階段を一気に駆け上がった。


そして、前方から向かってくる通行人を回避して、改札に行った。


(お金足りるかなー)


彼はICカードをタッチした。


無事通れたようである。




(自転車どこに停めたっけ?)


彼は近くの駐輪所に停めた自転車を探した。


(お!あった)


自転車に駆け寄り、鍵を差して回すと、それにまたがった。


(よし!行くか!)




自転車で約5分、数週間に一度行くスーパーマーケットに到着した。


普段は混雑している駐車場には、三台程しか止まっていない。


また、自動ドアから人っ子一人出てこないのである。


少しリラックスすると、リュックからタオルを取り出して、汗を拭いた。


(あの人たちかな?)


自動ドアの近くに集まっている三人組を見付けた。


良介はすぐに駆け寄った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る