第12話 変異ゾンビ

「身体能力強化らしいぜ!1」


「おーなんか強そうだな!スキルのとこ押してみて。効果表示されるから!」


「やってみるぜ!」


 彼は良介の指示通りやってみた。



「身体能力強化」

[効果]

自身の身体能力を10秒間3倍に強化することが出来る。

[クールタイム]

15秒



「らしいぜ!」


(あれ?もしかして俺よりもチートじゃね…?)


 などとつまらないことを一瞬考えてしまった。


 だが、切り替えて探索を続けることにした。




「オラッ!」


 ガタイの良い彼は拳で数体のゾンビを破壊した。


「大雅、後ろ!」


 良介は油断していた彼のカバーをし、敵の群れを全滅させた。


「超強いじゃん大雅!」


「良介がいなかったら終わってたぜ!」


「てか本当に武器いらないの?」


「ああ!拳が一番信用出来る!」


「えぇ」


 彼らは他愛のない話をしながら前進していた。


 すると見覚えのある彫刻を彫られた非常扉に行く手を阻まれた。


「でけぇ扉だな!」


 初めてダンジョンに来た男は自分の身長の2倍程度ある扉を眺めてそういった。


「この先にボスがいると思うけど、どうする?」


「んーこれまでは余裕だったしいけるんじゃね?」


「前のダンジョンは雑魚敵よりちょい強いだけだったしいけるか!」


 彼らは余裕そうな表情で扉を開いた。


 するとその先は地下鉄のホームとなっていた。


 蛍光灯は時折点滅して不気味な雰囲気を演出している。


 その時、良介の足元何かが当たった。


「ん?なんだこれ?」


 足元を見ていると、既に息絶えた男性二人がいた。


「うおっ!?」


「なんだよこれ…」


 二人はこれは現実では無いと信じたかった。


 しかし、コツコツと前方の階段からコツコツと血色の悪い巨大な男性が降りてきた。


「ボスか?」


「絶対そうだろ!」


 血の付いた大剣をもったゾンビはこちらを見るや否や片手で持ったそれを地面に突き刺した。


 すると、怪物から放射線状に地割れが起こった。


「まじかよ!?」


 二人とも必死に柱に隠れた。


「大雅大丈夫か?」


「スキルが無かったら死んでたぜ」


 無事を確認すると、息を合わせて一気に距離を詰めた。


 だが、怪物は再び地割れを起こした。


 大雅はスキルを使い柱に隠れることが出来たが、良介は間に合わなかった。


 その瞬間、彼は磁器タイルの波にのまれてしまった。


「良介!?」


 大雅は良介の仇を討とうとした。


 しかし、良介は盾を構えて生存していた。


「良介、大丈夫か!?」


「ああ、なんとか!お財布にはダメージいったけど」


 そんな冗談を言う余裕がある良介に大雅は安心した。


「俺が前に出て囮になる!大雅は隙をついて!」


「おっけー!」


 彼らは再び接近した。


 ゾンビは雄叫びをあげ、臨戦態勢を整えた。


 良介が至近距離まで近付くと、ゾンビは大剣を横に振った。


 彼は盾で守っても死んでしまうと思いしゃがんで回避した。


「喰らえ!」


 彼は囮になるために一発だけお見舞いすると、大剣が届かない距離まで離れた。


 すると、もう一人の仲間が怪物の頭を強打しようとした。


 しかし、ゾンビは左手で拳を止めた。


「嘘だろ!?」


 大雅は驚いた表情で距離をとった。


「くそ!なんかねぇのか?」


「なんかって…あっ!」


「おっ!思いついたのか!?」


 すると、良介は粉が入った袋3つとマッチを出現させた。


「これだけで1000円か…」


「良介、どうすればいい?」


「これをゾンビの近くにばらまいてくれ!」


 そう言うと、彼は短剣で袋を切り裂いて大雅に渡した。


「了解だぜ!」


 大雅は機敏な動きでゾンビを翻弄しながら袋の中身をばらまいた。


 同じように良介もした。


「次はどうすればいい?」


「全力で離れて柱に隠れろ!」


「ええぇ!?」


 大雅は彼の言う通りにした。


 すると、良介はゆっくり近づいてくる怪物に向けて火のついたマッチ棒を投げた。


 その刹那、爆発を起こした。


「やったか?」


「分からないから一気に攻めるぞ!」


 大雅の予想通りゾンビは立っていた。


 彼らは弱った様子の怪物に追い打ちをした。


 すると、ゾンビは力任せに大剣を振るった。


「避けろ!!」


 隙をつき良介は胸を、大雅は頭を全力で攻撃した。


 ゾンビは力尽きて崩れ落ちると、そのまま動かなくなった。


「よっしゃああああああああああ!」


「やったな!大雅!」


「ああ!」


 そんな話をしていると、無機質な声が聞こえてきた。



「レベルが上がりました」


「ダンジョンを攻略しました。攻略者に称号と報酬を与えます。また、帰還ゲートを生成致します」



 その瞬間、二人の目の前に光が集まり物体を生成した。


 良介の目の前には血の付いた短剣が、大雅にはボスが使っていた大剣が贈られた。


 そして、宣言通り目の前に一目見てワープゲートと分かるものが現れた。


「良介、帰るぞー!」


「ちょっとまって。スキルで宝探す!」


「え?スキル2個持ってんの?」


「言ってなかったっけ?なんでもショップで買えるんだよね」


「えええ!?チートじゃん!?」


「けど高すぎて買えないんだけどね」


「いいなー」


 良介が辺りを入念に探したが、今回のダンジョンには隠された宝は無かった。


「無い…」


「まあそういう事もあるって!」


 大雅は笑いながらそう言った。

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