第54話 逃走
急いで近くのコンビニまで逃げてきた。
猛暑日だからか、俺以外には誰も居ない。
アーチ型の車止めに腰掛け、リックからスマホを取り出す。
すると、ある人に電話を掛けた。
「何だね?良介君」
3コール目に繋がった様だ。
「……サカキを倒しました。俺は一体どうすれば良いですか?」
「相手から攻撃してきたのだろ?君が罪悪感を抱く必要は無い」
全てを察し、慰めてくれる。
「でも……」
「辛いのはよく分かる。何度も見てきたからな」
自分が何を思っているのか分からない。
罪悪感?若しくは榊に対する怒り?
「君が行動しなければ、守れなかった人が居るだろう?今はその人達の事を考えろ」
「ありがとうございます。お陰で落ち着きました」
「それは良かった。また何かあったら連絡しろ」
「はい!」
赤いボタンを軽く押し、通話を切る。
(落ち込んでても仕方ないよな!)
俺は自転車に跨り、家に帰った。
「Aランク冒険者のサカキ氏が行方不明」
そんなネット記事を見付けてしまった。
俺は怖いもの見たさで記事を見る。
すると、そこにはこんな事が書いていた。
「本日、ダンジョンに行くと言い残し、行方不明になったとの事です。彼が行方不明となったダンジョンを特定しましたが、既に崩壊している為、捜査は難航しています」
記事によると、大分情報が揃っているようだ。
(俺に辿り着くのも時間の問題か……?)
更に情報を得たくて、コメント欄を見てみた。
「ボスに負けたとか?どちらにせよ残念だなー」
「殺されたんじゃね?実は人殺しとか悪い噂出回ってたし、仕方ないと思うがな」
「同じ依頼受けた人が死ぬ事から、死神っていう異名ついてた人?」
(有益な情報は無さそうだな)
俺は現実から逃げる為に眠った。
(……ん?スマホ鳴ってるな)
アラームとは異なる音によって、起こされた。
手探りでスマホをさがした。
直ぐに見付け、画面を見てみる。
すると、タクトからの着信があった。
(電話か。メールでも良いのにな)
少し迷惑だと思いながら、通話を繋ごうとした時、丁度切れてしまった。
(あっ)
眠い目を擦りながら、彼に電話を掛けた。
「朝早くにごめんね。連絡したい事があって」
「何があった?」
「奈々さんによると、第二回目のフィールドボスが来週の土曜日に現れるらしいよ」
「そうなのか?」
「それまでにレベル上げとか頑張ってね!」
「……ああ!了解!」
誰かを守る為、生き残る為に努力する事にした。
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