第14話
「お嬢様、王宮から社交界の招待状がきております」
レイが一枚の手紙を見せてそう言ってきた。
「ああ、たしか同じ年の子息令嬢だけを集めた社交界があるってレオ王子が言ってたわね。うぅ...面倒くさいわ」
「社交界は最高に美味しい料理が出ますよ」
「よし、いきましょう!!」
こうして私は王宮の社交界に参加したのだった。
◎
数日後、社交界当日。
「うわー!! なんて豪華なのかしら!!」
大きなシャンデリアに照らされた広い会場では、豪華な料理がビュッフェ形式で置かれていた。
「レイ、みてみて!! あそこの料理美味しそう!!」
「お嬢様、走ると危ないですよ」
私は一目散に料理の場所へ向かった。
これも、これも、美味しそう!!
「いただきまーす」
私は色々な料理を食べる。
うん、どれも美味しい!! 最高だわ!!
周りの貴族の子たちは、ほとんど料理には手をつけず挨拶や会話をしているけど、こんなに美味しい料理を食べないだなんてもったいないわ!!
私は物凄い勢いで料理を食べる。
すると突然、後ろから声をかけられた。
「おい、お前!!」
「ん?」
私が振り返ると、そこには腕を組んだレオ王子がいた。
「もっと貴族らしい振る舞いをしろ!! 食べ過ぎてリスみたいになってるぞ!!」
「ふぁ、ふぁい!」
「もぐもぐしながら返事をするなッ!!」
レオ王子がそう叫ぶ。
すると、レオ王子に気づいた周りの子息令嬢たちが、一言挨拶しようと集まってきた。
あわわわ、ちょっとこれ人集まりすぎよ!!
「ちょうどいい、お前も貴族なんだから今挨拶の練習をしろ」
なにそれ!? こ、この人数を!? 絶対いやだッ!!
「わ、私はお花を摘みに行ってきますわ~」
「あ、おま、逃げるな!!」
「ワーモウガマンデキナーイ」
「お前...!!」
「花束になるくらいお花摘んできますわ!! では!!」
私は透明化の魔法を使って会場の外へ逃げ出した。
「ふぅ、なんとか逃げ出せたわねってあれ? レイを会場においてきちゃった!?」
すると、真後ろからレイの声が聞こえた。
「ここに居ますよお嬢様」
「レ、レイ!? わ、私透明化で見えなかったはずだけど!?」
「お嬢様の匂いを追いかけてきました」
うそでしょ!? 鼻良過ぎない!? てかどんだけ私の匂い覚えてるのよ!!
「そ、そうなのね。あ、そうだ、せっかく外に出たし王宮の庭園を散歩してみない?」
「かしこまりました」
こうして私は綺麗な王宮の庭園を散歩しはじめた。
暫く歩くと、木陰でなにやら数人の令嬢が集まっている。
「ん? あれは何をやっているのかしら?」
よく見ると、木を背にした一人の令嬢が三人の令嬢に取り囲まれていた。
囲まれていた綺麗な緑色の髪をした令嬢は、一冊の本を大事そうに抱えてその目に涙を浮かべていた。
「あなた魔法も使えないのにこの社交界にきたのですか?」
「ほんと、貴族として恥ずかしくないの?」
「それに、いつまでこんな子供じみた本読んでるのよ!!」
「待ってください!! その本だけは!!」
「うるさいわね!!」
一人の令嬢が、緑髪の令嬢から本を取り上げる。
その瞬間、私は思わず彼女たちのもとへ走り、本を取り上げた令嬢の腕を掴んでいた。
「ちょっとあなた達!! 何をやっているの!!」
「なに?ってリリー・リステンド様!?」
「その本をその子に返してあげなさい」
そこで私は思いっきり威圧する。
「ひぃっ!? こ、これはお返しします!! す、すみませんでしたぁ!!」
「申し訳ありませんでした!!」
「お、お許しください!!」
彼女たち一斉に謝罪しながら、逃げるように走り去っていった。
「まったく...酷いことするのね。そこのあなた、大丈夫?」
地面にへたり込んで私を見ていた彼女は、私を見ながら小さく呟いた。
「白馬の...王子様...」
白馬の王子様? ああ!! この本のタイトルのことね。あ、てかこの本読んだことあるわ!!
たしか助けを求めるお姫様を、白馬の王子様が救いに来るっていう王道のストーリーで、とても面白かった記憶があるわ。
「はいこれ、あなたの大切な本なんでしょ?」
「あ、ありがとうございます!!」
私が落ちていた本を拾って渡すと、彼女は嬉しそうに本を受け取った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。