第23話

私とレイは屋敷を出発し、無事にジェシカの屋敷の門の前に到着した。


「ふぅ、やっと着いたわね」

「お疲れ様です。お嬢様」


馬車を降り、警備の騎士さん達が門を開けてくれたので、中に入る。


私が一歩進むと、屋敷の方から何か物体がゆっくりと転がり出してきた。


ん? 何あれ? 遠くてよく見えないわね。


「屋敷の方から何か転がってきてるわね」

「そうですね。あれは一体なんでしょうか?」


その物体は、私達の方に着実に近づいてきた。


「あれは...レッドカーペット!?」


な、なんか屋敷の方から、でっかいレッドカーペットが転がってきてるんですけど!?


そしてその大きなカーペットは、私の前でピッタリと止まった。


すると、どこから現れたのか、壮大な明るい音楽と共に、楽器を持った演奏隊達が、花壇や木の影、門の外からやってきた。


え、なになになにッ!? なんかすっごい沢山人が出てきたんだけど!?


ヴァイオリンやトランペットなどの金管楽器、小太鼓や大太鼓などの打楽器。様々な楽器の音が鳴り響く。


いや、めちゃくちゃ演奏綺麗だけど、なんで急に出てきたの!?


そして、どこからともなくやってきた、燕尾服に黒い蝶ネクタイをした美男美女達が、楽しそうにダンスをする。


その中の一人の女性が、困惑している私のもとに、軽やかなステップで歩み寄ると、私にレッドカーペットの上を歩くよう、笑顔を向けてジェスチャーで促した。


「こ、この上を歩けばいいの?」


私は困惑しつつも、歩みを進める。


か、歓迎してくれてるのかな?


てか、なんか歩いてる間にも、周りにどんどん人が増えてるんですけど!?


そして、明るい演奏とダンスに囲まれて歩いていると、あと少しで屋敷に到着する所まで来た。


「や、やっと到着するのね...なんだか凄く長い道に感じたわ...」


すると、屋敷の窓が一斉にバンッと開き、中からメイドさん達が一斉に紙吹雪を投げ出した。


うわー、紙吹雪が風に舞ってキレイだなぁ〜、じゃなくてッ!! なんなのよこれ!?


そして、音楽も終盤なのか、最高潮に盛り上がってゆく。


更に、屋敷の両端から、プラカードを持った使用人さんたちが屋敷の前に集まってきた。


演奏隊とダンサー達も、屋敷の前に集合する。


え、な、なんか凄い皆集まってきてる。


私の前に全員が揃ったタイミングで、音楽の終了と同時に、伏せられていたプラカードが上げられた。


「よ」「う」「こ」「そ」「リ」「リ」「ー」「様」「!」「!」


プラカードには、一文字ずつ丁寧に文字が書かれていた。


紙吹雪が一枚、私の頭にひらひらと落ちる。


一瞬、放心状態になっていた私だが、ハッと意識を取り戻す。


いやこれちょっと大袈裟すぎないッ!?


私ってマナー教えて貰いに来ただけだよね!?

これってただ二人の令嬢同士が会うだけだよね!?


すると、屋敷のドアがバンっと開いた。


「やっと来たんですの? まったく、いつまで待たせるんですの!!」


そこには、ちょっと頬っぺを膨らませたジェシカがいた。


「あ、すみません。少し歩くのに時間が掛かってしまって...」


「ふん!まったく、予定の時間よりも早く来るのが常識ですわ。それこそ、昨日来てくれても良かったのですわ」


「え? い、いや、早めに来た方がいいのはわかりますが、一日前に来るのは逆に非常識では…?」


「き、昨日来てくれたら、ワタクシもソワソワせずに夜寝れましたわ!!」


「え、ジェシカ様寝てないんですか!?」


「う、うるさいですわ!!ほら、早くあなたにマナーを教えてあげますわ」


そう言ってジェシカは屋敷の中へと入っていった。


私はその後を慌てて追いかける。


私がふと振り向くと、整列した使用人さん達が、微笑ましそう表情で私達を見ていた。

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