第30話

私はジェシカの屋敷で、ジェシカと一緒にお茶をいただいていた。


「そういえば、ルーク様が先日ワタクシの屋敷にいらっしゃいましたわ」


「ゴッホッ!!」


私は思わず飲んでいた紅茶を咽る。


「だ、大丈夫ですの!?」


「だ、大丈夫」


ルークって、ジェシカがライバルになる攻略対象じゃない!!


宰相の息子で、完璧な令嬢であるジェシカに「一人の女の子としての幸せを、見失わないでほしい」というセリフを吐き、ジェシカが彼を意識するようになる人物――なんだけど...


私はジェシカをじっと見る。


ジェシカは頬を赤らめ、目逸らす。


うーん。今のジェシカを見ると、前のように自分を追い込んでいる感じは全くないのよねぇ。


最近は、普通の女の子らしい部分も出てきてるんだよね〜。


持っている小物は前の大人っぽいものとは違って、可愛いピンクを基調とした物が多いしね。


ハンカチなんかには、うさぎさんの刺繍がされていたりする。(自分で縫ったらしい)


つまり、なんと言うか...うん。以前のようには悩んでいないようなのだ。


まぁ、私がルークのセリフを先に言ったからなんだけどね。


「そ、それで? ルーク様に何か言われた? そのぉ、なんて言うか、女の子らしさについてとか?」


「なんですのその質問? 女の子らしさについてですの? うーん。あっ、そういえば言われましたわ」


「な、なんて!?」


「えーっとですわ。『ジェシカ様は令嬢としても素晴らしいですが、自分の時間も大切にされ、可愛らしい部分もあってとっても素敵です!』と仰っていましたわ。まぁ、よくある社交辞令ですわ」


な、なんか真逆のセリフになってるううう!!


「あと、今日ルーク様からワタクシ宛に、花束とお手紙が届きましたわ」


「そうなの?」


「ええ。なんでも、またすぐに会いたいそうですわ」


「ふーん、そうなのね」


ていうか、ジェシカはゲームだとルークの事が好きだけど、セリフが変わった今はどう思ってるんだろう?


「それで、ルーク様はどうだった? 仲良くなりたい?」


「そうですわね。ワタクシ達は将来王国を支える身ですから、友好的な関係を築くべきですわね」


「え、えーっと、そういう事じゃなくて、男性としてはどう?」


「男性としてですか? まぁ多分優しい方ですわ」


あれぇ? ジェシカ全然興味なさそうなんだけどぉ?


ゲームならもっと仲良くなりたがるはずなのに...


「そ、それに、今は殿方なんかよりも...なっなんでもないですわ!!」


ジェシカは私を見てあわあわとしだす。


ん? ジェシカはなにを言おうとしたのかな?

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