第42話

私が学園に入学して、初めての週末がやってきた。


私は二日間ある休みを使って、屋敷に帰ることにした。


「五日も寮で生活していたから、皆の顔が早く見たいわ。元気にしているかしら?」


私は馬車に揺られながら、向かいに座るレイに話しかける。


「元気かどうかは分かりかねますが、皆様きっとお嬢様のお帰りを心待ちにしております」


「え?」





屋敷に到着した私は、馬車を降りて、駆け足で玄関ルームへと向かった。


ガチャ。


「みんなただいま!! 」


私は勢いよく扉を開け、実に五日ぶりとなる屋敷へと入る。


すると、お父様。お母様。使用人の皆。そして、ミリーがお出迎えの為に待っていてくれたのだが――


「ミリーどうしたの!?」


私の目に飛び込んできたのは、ゲッソリとした顔で、目の下に隈ができた妹だった。


「...あ、またお姉様の声が聞こえてきた気がします...」


すっごい顔色悪いけど大丈夫なの!?


私がいない間に一体何があったの!?


ミリーはフラフラとして、しっかりと立つことが難しそうに見える。


「メアリー。ミリーに一体何があったの?」


私は後ろで控えていたメアリーに、事の経緯を聞いてみる。


「その事なのですが...リリーお嬢様に会えないことへの寂しさから、ミリーお嬢様はここ五日間、一睡もできない生活を送っておりました...」


「五日も寝てないの!? てか、五日って私が学園に行った初日から寝てないじゃない!!」


「その通りでございます...」


すると、ミリーが私を遠い目で見つめて、力なく言葉を発した。


「...あ、お姉様がいます。あぁ...でも抱きついたら、昨日のようにまた消えてしまうんです」


そして、ミリーはよろよろと私に抱きつこうとした。


「あれ? お姉様に触れられます」


ミリーはぼんやりとした様子で、私の顔や体をペタペタと触る。


首を傾げて、今度は私の胸をペタペタと触る。


む、胸の時間が長いわね...


すると、ミリーの目に生気が宿った。


「この大きさ......ほ、本物のお姉様ですか!?」


いやどこで気づいてるのよ!!


すると、顔色が一気に良くなったミリーは、力いっぱい私に抱きついた。


「本物のお姉様です!!」


「そんなに寂しかったのね。よしよし」


私が頭を優しく撫でると、ミリーが突然泣き出してしまった。


「うわあああん、寂しかったですお姉様ああぁ」


私はミリーを優しく慰めた。


暫くして、落ち着いてきたミリーが、腕をギュッと組んできた。


「えへへ、お姉様は今日、ミリーとデートをしてもらいます!!」


「ええ。もちろんいいわよ」


「やったー! なのです!」


そう喜ぶミリーの瞳に、一瞬光が無かった様に感じた。

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