第43話

「おやすみなさいませお嬢様」


「レイもゆっくり休んでね」


レイが綺麗なお辞儀をした後、照明を消して私の部屋を出て行った。


外はキラキラと輝く星空が覆っている。


ベッドに身体を預けた私は、今日起きた出来事を思い返す。


今日はミリーが色々な場所に連れて行ってくれたわね。って言っても、ほとんどは私が連れて行ったことのある場所なんだけどね。


ふふ。小さい頃に行った場所まで覚えてて、凄く嬉しかったわ。


昔からミリーは、どこに行くにしても私にくっ付いてきたものね。


私は、心から愛する妹との思い出を浮かべ、深い眠りについた。


―――――

――――

―――

――


う、うぅ...なんだか身体が重たい...


私が覚醒しきらない意識の中で目を開くと、そこには、ネグリジェ姿で私に跨るミリーがいた。


「ミリー? どうしたの?」


すると、ミリーは暗い声で言った。


「お姉様。ミリーは今日凄く楽しかったです。色々な場所に行って、お姉様が嬉しそうに笑いかけてくれて...この笑顔がミリーに向けられたものなんだって思うと、心が満たされました」


いつもと違う雰囲気のミリーに、私は困惑する。


「そして、お姉様の笑顔を見て、こうも思いました。これからお姉様は学園で、ミリーの存在を感じない場所で、ミリーの知らない内に、ミリーの知らない誰かのもとへ行ってしまうのではないかと」


すると、ミリーが悲しそうな表情をした。


「もういっそ、お姉様を誰にも渡さないために――」


そう言って、ミリーは私に覆いかぶさると、私の瞳を見つめてきた。


「ミリーはもう我慢できないです」


うーん。ああ、そういうことね!! ミリーは私が学園にいる間、ずっと寂しかったから、私と一緒に寝たいのね!!

今日含めて六日も寝てないから、きっと疲れているんだわ!


そこで、私はミリーの首に手を回し、私の胸に抱きよせて、頭をよしよしする。


「ちょっ、違いますお姉様!!」


「いいのよ。寂しかったのでしょ? 今日はお姉様と一緒に寝ましょうね」


「ち、ちが...お姉様をミリーだけのものにする為に」


私の胸に抱かれて言葉は良く聞こえないけど、両手を動かして物凄く喜んでるわね!!


そして、暫くすると、可愛い寝息が私の胸元から聞こえてきた。





「う、うーん。よく寝たわ」


次の日、私は少し遅い時間である、お昼に目が覚めた。


私が右側に視線を落とすと、私に足を絡ませ、親指を少し咥えたミリーの可愛い寝顔があった。


そして、視線を正面に向けると、鼻血を垂らしたレイが、私たち二人をガン見していた。


「な、なんでいるの? レイ」


「お嬢様が中々起きて来られないので、起こしに参りました」


「そう。それで、どれくらい前からこの部屋にいるの?」


「二時間ほど前からです」


「いや起こしなさいよ!!」


「申し訳ございません。それにしても、ミリーお嬢様も一緒にお休みになっているだなんて思いませんでした」


「まぁ、昨日は一緒に寝たからね」


すると、レイがじゃらっと何かを取り出した。


「ん? それは魔法で強化した首輪にロープ? あと目隠し?」


なんの道具だろう?


「こちら、ミリーお嬢様が寝ている傍に落ちておりました。こちらは昨日使われたのですか?」


「使う? 一体それを何に使うのよ」


すると、私たちの会話がうるさかったのか、ミリーが起きてしまった。


「んん。お姉様...?」


「あ、ごめんなさいねミリー、起こしちゃったかしら? あ、そうだ。あのレイが持っている首輪と――」


すると、ミリーが飛び起き。レイの持っていた道具を勢い良いく取った。


「な、なんでもないですお姉様!!」


「え、でもそれ何に使うものなの?」


「なんでもないです!!!!」


「そ、そうなのね...」


一体何に使う道具だったのかしら...?





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る