第25話

「お待たせいたしました。こちらが本日お召し上がりいただくケーキでございます」


綺麗な花々に囲まれたティーガーデンに、私とジェシカのケーキが一つずつ運ばれた。


私が頼んだのはショートケーキ、ジェシカはチョコレートケーキだ。


な、なんて美しいのかしらッ!!


キメ細やかな生クリームに、鮮やかな盛り付け、そして、ケーキの上のイチゴが輝いて見えるほど瑞々しいわ!!


ゴクリ。


その時、私はあまりのケーキの食べたさに、無意識に身体強化を使っていた。


うおおおおおおお!!


私は、凄まじい勢いでケーキを食べる。


そのスピードは、優に音速を超えていた。


あーめちゃくちゃ美味しかったわ!!


「ごちそうさまでした!!」


ってあれ? 何だか周りの動きがゆっくりに見えるわ。


こ、これがゾーンってやつなのね...(多分違う)


そして、私はおもむろにジェシカの方を見る。


ジェシカは、ケーキを口に運ぼうとしていた。


今はそれが、スローモーションのようにゆっくりと見える。


う、うぅ...ジェシカのケーキも美味しそう...


私は我慢できずに、両手をテーブルについて身を乗り出す。


「そのケーキ一口だけちょうだい!!」


その瞬間、世界はいつも通りの時間で進んでゆく。


「と、突然なんですの!?」


「一口だけお願い!!」


「しょ、しょうがないですわ。ワタクシならいいですが、あまり他の令嬢にそういうこと言ってはダメですわ。それこそマナー違反ですわ」


「わかった!じゃあジェシカだけにする!!」


そこで何故か、ジェシカは顔を真っ赤にした。


「わ、わかったならいいですわ。そ、それでは、あなたのケーキも一口下さいですわ」


「ごめん、全部食べちゃった」


「はやッ!? 」


そして、ジェシカは額を抑えてため息をついた後、自分が食べようとしていた一口分のケーキを、私に差し出してきた。


「はぁ、わかりましたわ。ほら、ワタクシのケーキ、一口どうぞ」


「ありがとうジェシカ!!」


その時、私の耳に聞き慣れた声が聞こえてきた。


「お姉様あああ!!どこですかぁぁぁ!!」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る