第15話
「助けてくださりありがとうございます!!」
「気にしないでいいわ。それよりも酷い目にあったわね」
「い、いいんです!! あ、あれは魔法が使えない私が悪いので...」
そんな風に言う彼女の翡翠色の瞳は、とても悲しそうだった。
「あなた魔法が使えないの?」
「は、はい...もう八歳なのに魔力操作ができなくて...」
うーん、確かに彼女の魔力の流れを見ると、心臓の辺りで魔力の流れが悪くなっている。
これだと魔力操作が人一倍難しいはずだ。
「レイはどう思う?」
「恐らく過去のトラウマや精神的ストレスによる魔力詰まりでしょう。これを治すにはかなり高度な精神治療魔法が必要と云われています。ですが、お嬢様の魔法なら容易いでしょう」
「そうなのね、ありがとうレイ」
「お役に立てて光栄です」
「ねえ、あなた名前はなんていうの?」
「わ、私の名前はアシュリー...アシュリー・リムートです」
「じゃあアシュリー、今からあなたの魔力の流れを良くする魔法をかけたいんだけど、いいかしら?」
「で、でも...」
そこで彼女は少し躊躇って、胸の前で手を握る。
「大丈夫、私を信じて?」
私がそう言うと、彼女は暫く私の目を見つめて答えた。
「お、お願いします!!」
私はその返事を聞いて、彼女の両手を握った。
彼女のトラウマや暗い過去のことはわからないけど、それが原因で今も辛い思いをしているのなら、その過去を乗り越えてほしいわ。
そこで、私は最上級の精神治癒魔法を唱える。
「マインド・リザレクション」
すると、私の光輝く魔力がゆっくりと彼女に流れていき、やがて全身を包み込んだ。
彼女はそこで目をゆっくりと閉じ、とても安らかな表情をした。
そして、彼女の目から一筋の涙がスーッと落ちたところで、彼女を包み込んでいた魔力の光が静かに消えていった。
「どう? 魔力は感じる?」
彼女は自分の両手を見ながら驚愕の表情を浮かべて答えた。
「し、信じられないです!! 感じます!! 自分の魔力が感じられます!!」
「そう、それはよかったわ。じゃあ一つとっても簡単な魔法を使ってみましょうか」
「ま、魔法...私が魔法を...」
「きっと使えるわよ。人差し指を立ててこう唱えるの、『ライト』」
すると、私の指先に青白い光が灯った。
「さあ、やってみて」
すると、彼女は人差し指を立てて、恐る恐る唱えた。
「...ライト」
すると、彼女の指先に青白い光が小さく灯った。
「す、すごいです!! 私が本当に魔法を!!」
そこで彼女は目を輝かせ、自分の指を空に掲げて喜んだ。
せっかく魔法が使えるよになったのだから、未来が希望で溢れていることを彼女に教えてあげたいわ。
「ねえアシュリーみて!! 魔法が上手くなるとこんなことができるのよ!!」
私はライトを使って色とりどりのお花を空中に作った。
光を放つ花たちは、空を思い思いにふわふわと移動してとても綺麗だ。
「わあ、すごいです!!」
彼女は私の魔法をみて、更に目を輝かせた。
あ、そうだ!! 彼女だったらこれ絶対喜ぶよね!!
私は彼女の持ている本に出てくる、立派な白馬をライトの魔法で作って彼女の前に出した。
「じゃーん!! どう? 素敵でしょ?」
そこで彼女は驚きの表情をしたが、その後頬を赤らめて小さく呟く。
「やっぱり本当に居たんだ...白馬の王子様。いや、王女様...かな?」
そして彼女は満面の笑みで答える。
「はい!! とっても素敵です!!」
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