第60話
「ルイ様。レイの入れた紅茶はどうですか?」
「はい! とっても美味しいですよ!!」
ルイはカップをローテーブルに置きながらそう言った。
突然押しかけてきたけど、ルイは一体どうしたのかしら?
そんなことを考えながら私はルイを客室へと案内した。
私の隣りにミリーが腰掛け、その後ろにレイが控える。
レオ王子とルイは向かいのソファーに座っていた。
すると、紅茶を置いたルイが目を輝かせながら口を開いた。
「突然押しかけて申し訳ありません。前の実験が成功して、居ても立っても居られなくなったんです!!」
「せ、成功? 実験は失敗したはずじゃ...」
「何をおっしゃっているのですか! 実験は成功ですよ! 2人のイメージが完璧に合わさったじゃないですか!!」
「え、ああ。確かに合わさりましたけど、あのチョコすっごい不味かったですよね?」
「2人のイメージが合わさって味が変わったのです! それはつまり成功なんですよ!!」
「う、うーん? よくわからないです」
「お姉様が頭を抱えています!! ルイ様!! お姉様はポンコツで天然でトンチンカンでおっちょこちょいなんです!! そんなお姉様をいじめないでください!!!」
そう言ってミリーは私を身に寄せた。
「ミリー、私のこと庇ってくれてるんだよね!? 貶してはないんだよね!?」
「もちろんです!! ミリーはどんな時でもお姉様の味方です!!」
「あ、ありがとう?」
私は困惑しながらもミリーの頭を撫でた。
「と、とにかく! 実験は成功したのです!!」
「そ、そうなんですね。成功してよかったです」
私が小さく拍手をすると、ルイはにっこりと笑った。
「はい! ですから、今後もボクと一緒に魔法の実験をと思いま――」
「ルイ。それ以上はやめておけ」
すると突然、レオ王子がルイの言葉を遮った。
「え、どうし――」
言葉を止めたルイの視線の先には、どす黒い魔力を出しながら微笑むミリーがいた。
「あ、えと、で、ではリリー様、また改めて学園でお会いしましょう!!」
ルイはサッと立ち上がって、ベテラン執事も顔負けな綺麗なお辞儀をして部屋を出て行った。
な、なんか逃げるように帰っていったわね...なんだったんだろう...
私が隣を見ると、ミリーが可愛い笑顔でこちらを見上げていた。
◎
「よし、今日の授業はここまでじゃ。休み明けで忘れぬようしっかり復習しておくのじゃぞ~」
キロ先生はそう言って教室から出て行った。
私は人がいなくなっていく教室を見ながら考えていた。
明日...いよいよ明日だ!! 明日はソフィアの誕生日!!
私にとっての一大イベントに思わず拳に力が入る。
いや、ソフィアにとってのイベントか...
「あのー、リリー様? 急に固まってどうしたのですか?」
「いつもの事ですわ。きっと何か考え事をしているのですわ。アシュリー様、邪魔をしない為にも先に教室を出ておきましょう」
「そ、そうですね」
アシュリーとジェシカが教室を出て行くが、私は身支度をしているソフィアから目を離せないでいる。
ソフィアをなんとしてでも祝ってあげたい!! でも明日は休みだから学園にソフィアはいないし......
これは思い切って声をかけるしかないわね。
私は前世でもソフィアの誕生日を一人部屋でケーキを買って祝ってたんだもの。
ゲームが現実となった今、おめでとって直接言いたいわ!!
おめでとう!! お誕生日おめでとうって!!
その時、ソフィアが鞄に荷物を入れ終え、教室を出ようとしていた。
ヤバい!! 声を掛けなきゃ!!
「あの!! ソフィア誕生日おめ――じゃなくて!! ソフィアちょっといい?」
「は、はい! どうかされましたか? リリー様」
私の呼び止めに不思議そうに首を傾げるソフィアの元へ、私はゆっくりと近づく。
や、やばい!! 教室を出そうだったから急いで呼び止めちゃったけど、なんて言えばいいのこれ!?
「リリー様?」
ソフィアの前で数十秒固まった私を見て、ソフィアがきょとんと訪ねてくる。
「あ、えっとね。あのね。そのね」
「はい」
「明日ソフィアの家に行ってもいい?」
「え!?」
何やってるのよ私ィィィィ!! 突然家に行くなんてそんなの――
「い、いいですよ」
いいんかーい!! え、明日家に行っていいの!? マジなの!?
「あっ、でも...」
すると、ソフィアの顔に影が落ちる。
まずいわ! これでやっぱりダメってなったら嫌だ!!
ここは強行突破よ!!
「うちは孤児院――」
「ありがとう! じゃあ明日行くわね!! それじゃ!!」
私は駆け足で教室を出て行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。