ヒロインちゃん

ゴーン。ゴーン。


澄んだ青空に鐘が鳴り響く。


前世の記憶を思い出して十一年。


私は十五歳となり、ついにゲームの舞台となる学園に入学する事となった。


ここをヒロインちゃんが通るはず...!!


そして私は今、学園内の木の影から校門を見張っていた。


ドッドッ、ドッドッ。


や、ヤバい、緊張で鼓動が早くなってきちゃった...


ヒロインちゃんは、乙女ゲーム『ぷりぷりプリンセスぷり』のパッケージで、私が一目惚れしたキャラだ。


そして、そのヒロインちゃんが一体どんなキャラなのか、特徴を三つあげるとしたら。


1.可愛い

2.可愛い

3.可愛い

4.可愛い


だ。


い、いや、コレだと何も伝わらないわね...(あと一つ多い)


ヒロインちゃんの特徴を三つ真面目にあげるなら。


1.可愛い

2.ドジっ子

3.天然ちゃん


だ。


うん。コレこそヒロインちゃんね!!


そんな事を私が考えていたその時、彼女は現れた。


ピンクのポニーテールを揺らし、貴族が通う広大な学園を、キョロキョロしながら歩いている。


髪と同じ色の瞳は大きく、透明感のある肌が、陽の光を浴びて更に光って見える。


その表情はとても不安そうだ。


彼女こそ、乙女ゲーム『ぷりぷりプリンセスぷり』のヒロインちゃんこと、ソフィアだ。


ほほほほ、本物のソフィアだッ!!

リアルで見ると可愛すぎるんですけど!?


てか、あれはゲームのオープニング通り、道に迷っているところね。


ゲームだとこの後、平民出身のソフィアは悪役令嬢である私に絡まれる。


そこを助けに入ったレオ王子に、目的地である鑑定の儀の場所教えてもらうのよね。


鑑定の儀とは、魔力を計測してクラスをS~Dにわける儀式のことだ。


ど、どうしよう...私がソフィアに意地悪な事言うなんて嫌だし...


普通に道教えてあげた方がいいかな?


ああ、でもお話しするの緊張するから、私はただ推しを見守っていよう!!


すると、突然後ろから声を掛けられた。


「何やってんだ? お前」

「ぎゃあああああああッ!!」


ソフィアを前にして緊張していた私は、突然声を掛けられたことに驚き、両手を広げて叫び声を上げながら、木の影から出てしまう。


そんな様子で現れた私を見たソフィアは、「ひぃっ!!」と可愛い悲鳴を上げた。


そして、私とソフィアはぶつかった。


「いてて...」

「あ、あのぉ...」


気がつくと、私はソフィアに覆い被さり、涙目な彼女の顔が目の前にあった。


あばばばばば、な、なにこの状況!?

ぶつかるなんて最悪、でもソフィア可愛い最高。

でも最悪、でも最高、でも最悪、でも最高。


ちょっと落ち着くのよ私ッ!!


と、とにかく謝らないと!!

ゆ、勇気を出して謝るのよ!!


「ひいっ!!」


私の考え込む悪役顔を見ているからか、ソフィアはずっと怯えている。


私は勇気を振り絞る。そして、左右の手で彼女に床ドンをして、誠実に謝る。


「ゴメンナサイ」


や、やばい!! なんか緊張でカタコトになっちゃた!? 顔も強張っちゃったし、てかソフィア更に怯えてない!?


「わわわ、私こそすみませんでした!!」


彼女は勢いよく立ち上がり、何度もペコリとお辞儀をした後、猛烈な勢いで走って行った。


「あ、鑑定の儀はあっちですよ!!」


私がソフィアの向かった方と逆を指さす。


すると、彼女は顔を真っ赤にして方向転換した。


「相変わらず騒がしいなお前は」


私に声を掛けた犯人、レオ王子が話しかけてきた。


誰のせいで騒がしくなったと思ってるのよ!!

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