第39話
「お主ら静かにするのじゃ! 立っている者は今すぐ座るのじゃ!」
開いたドアの向こうにいたのは――
こ、子供?
ぴょこぴょこと効果音が聞こえてきそうな足取りで、その子は教卓へと向かう。
身長ほどある水色の髪を揺らし、教卓に辿り着くと、持っていた黒い表紙をパタンと置いた。
「迷子?」
「迷子ですね」
「迷子ですわ」
「おいそこ! 迷子じゃないわ!!」
そう言う彼女はその身長から、顔の上半分しか教卓から見えていない。
しかし、その頭から生える立派なアホ毛は、しっかりと確認できる。
「良いか?
その瞬間、このクラスの全員が口を揃えて言った。
「「「「「先生!? 子供じゃなくて!?」」」」」
「子供じゃないわ!! 妾は立派な大人じゃ!!」
更に、キロ先生は「妾は怒るとコワいのじゃ!」と言って、皆を睨む。
しかし、その姿が愛らしい子供にしか見えなかった私は、クラスの皆と口を揃えて言う。
「「「「「可愛い~!!」」」」」
「可愛いって言うななのじゃああああ!!」
皆がキロ先生の可愛さにほんわかムードの中、クラスのどこからか話し声が聞こえてきた。
「キロって、あの伝説の冒険者パーティー、秘宝の星のキロか?」
「まさか、あんなに可愛い子があのキロな訳ないだろ」
◎
「さて。お主らには今日、
キロ先生はそう言って、名簿に目を通す。
うーん。ゲームで担任の先生はテキストで少しだけ登場するけど、こんなにキャラの濃い口調だっけ?
「じゃあまずソフィア。お主から自己紹介をするのじゃ」
「ひゃ、ひゃい!!」
教室の真ん中辺りに座っていたソフィアは、慌てて立ち上がり、そわそわしながら皆の前に出ようとする。
あっ!ソフィアがトップバッターなのね。すっごい緊張してるだろうなぁ。
頑張れソフィア!!
「キャっ!!」
すると、教室に敷かれていたカーペットにソフィアの足が思いっきり引っかかり、盛大に転んだ彼女は、そのまま階段状の教室をゴロゴロと転がり、カーペットに包まれながら皆の前に出た。
ソ、ソフィア!? 大丈夫なの!?!?
あまりに予想外な出来事に、クラスの皆は呆然としている。
すると、カーペットがもぞもぞと動き出し、赤面したソフィアがぱっと顔を出した。
「私の名前はソフィアです!! これからよろしくお願いします!!」
いやこのタイミングで自己紹介!? もうちょっと落ち着いてからの方がいいんじゃない!?
カーペットから顔しか見えてないよ!?
すると、ソフィアは目をギュッと閉じて、カーペットのままお辞儀をした。
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