第40話

「うむ。あと自己紹介をしていないのは、後ろの三人だけじゃな。ではリリー・リステンド。お主が先に自己紹介をするのじゃ」


「はい!」


クラスの皆が自己紹介を終えた後、残ったのは私とジェシカとアシュリーだけだった。


私はクラスの皆の前に立つ。


すると、私の目にピンクの髪の天使が映った。


や、やばい!! ソフィアに見られているッ!!


す、すっごい緊張してきた...


その時、私は緊張で強張った表情をしてしまう。


すると、皆の様子がおかしくなる。


呼吸のリズムが正常ではない者や、冷や汗をかいている者もいる。


「こ、こんにちは。リリー・リステンドです」


私が喋った瞬間、皆が肩をビクッと震わせた。


え!? なんかめっちゃ怯えられてない!?

も、もしかして私の噂が原因!?


「と、特技は魔法です」


ビクッ。


「趣味は食べることです」


ビクッ。


「よろしくお願いします」


ビクッ。


いや私どんだけ怯えられてるの!?

なに私が喋る度に肩震わせてるのよッ!!

一番左奥の男子に関しては、なにスーッと涙を流してるのよ!!


「うむ。妾はお主の魔法を楽しみにしておるぞ。では席に戻るとよい」


「は、はい...」


私はとぼとぼと席に戻る。


な、なんか人に怯えられるって悲しいわね...


「次はジェシカ・メリストン。お主が自己紹介をするのじゃ」


「はい」


次はジェシカの番なのね。


ジェシカは優雅に歩みを進め、皆の前で見事なカーテシーを披露した。


すると、教室中から感嘆のため息が聞こえてきた。


「皆様ごきげんよう。ワタクシの名前はジェシカ・メリストンですわ」


「おぉ...」

「なんて優雅な所作なのかしら...」

「美しいわ...」

「結婚したい...」


クラスの皆は、うっとりとした目でジェシカを称賛していた。


ふふ、親友のジェシカが褒められて、私もなんだか嬉しいわ。


その後も令嬢として素晴らしい自己紹介を進めていったジェシカだが、その途中で「ふぅ」とため息をつき、胸に手を当てた。


あれ? ジェシカどうしたのかな?


すると、何かを決心したようで、ジェシカは先ほどよりも大きめの声で言った。


「ワ、ワタクシが最近嵌っていることは。このように、可愛い刺繍を縫ったり、可愛い物を集めるたりすることですわ!!」


そう言って、ジェシカはハンカチを取り出し、自分で刺繍した可愛いウサギさんを見せた。


皆は、今まで見せていた完璧令嬢なジェシカとは違う、恥ずかしそうにハンカチを見せる彼女に呆然とした。


それを見て、ジェシカが不安そうな顔になる。


しかし、完璧令嬢のイメージだったジェシカの意外な一面に親近感が湧いたのか――


「かわいいです!!」

「私にも見せて下さい!!」

「是非教えてほしいです!!」


教室全体が温かな空気に包まれ、ジェシカの表情に笑顔が戻った。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る