第45話

肩まであるグレーの髪に、上向きにカールした長いまつ毛、中世的な顔立ちをした攻略対象。ルイが笑顔で立っていた。


ええええ!? なんかルイが私たちのパーティーに入りたがってるんですけど!?


ぐぬぬ...きっと私が鑑定の儀で目立っちゃったことが原因ね...


こ、このままルイがソフィアとパーティーを組まなかったら、ソフィアが孤立しちゃうわ。


ここは何としても断らないと...!


「あ、あのー。なんて言いますかぁー。も、もう組むメンバーが決まっちゃっててー」


「え? 三人しかいないように見えますが...?」


ま、まずい!! どうして私はこんなすぐバレるような嘘をついたのよ!!


こ、ここは必殺ッ! 話題すり替えよ!!


「ち、因みに。どうして私たちのパーティーに入りたいのですか? ルイ様ならきっと、沢山のお誘いが来ていると思うのですが...」


その瞬間、ルイの瞳が、信じられないほど輝いた。


「それはもちろん、リリー様の魔法を間近で拝見したいからですよ!!」


ルイの声が先ほどより大きくなり、まるでマシンガンの様な早口で語り出した。


「ずっと噂には聞いておりましたが、鑑定の儀でその力を目にした時、ボクは驚かずにはいられませんでした。リリー様の魔力は美しいし、力強い、そして、ユニークさがあるんです!! ボクはリリー様の魔法をこの目で拝見したく――」


ルイは子供の様な無邪気な表情で語り続けた。


お、思い出した...ルイって確か魔法が超大好きなキャラだったわ...


私がそんな事を考えている今も、ルイの早口は止まらない。


ど、どうしよう...どうやって断ろう...


すると、ジェシカが私とルイの間に立った。


「ちょっと、ルイ様。リリー様がお困りですわ」


ルイはしばらく言葉を詰まらせ、その後、おとなしくなった。


「そ、そんなことは...ボク、リリー様の魔法が本当に気になっていて...」


「おやおや。またルイ君の魔法オタクが発動してしまいましたか」


すると、もう一人の攻略対象、ルークがやってきた。


よ、よかったわ。確かゲームだと、ルーク、ルイ、レオ王子、ソフィアの四人でパーティーを組むから、きっとルークがルイを連れ戻しに来たのね。


すると、ルークが少し緊張した様子で私の方を向いた。


頬を赤く染め、その視線はなぜかジェシカの方をチラチラと見ていた。


「リリー様。も、もし宜しければ、僕をパーティーに入れて頂けませんか?」


いやいやいや!! なんでルークもこっちのパーティーに入りたがってるの!?

どういうことよ!!


「あっ! ズルい! ボクが先にお願いしたのに!! リリー様、ボクをパーティーに入れて下さい!!」


「いや僕を!!」


二人の声はどんどん高まり、周りの生徒たちも注目し始める。


どちらかを選ぶわけにはいかないし、どうすればいいの!?


パニックになった私は、咄嗟に嘘をついてしまう。


「も、もう誘う四人目が決まっているんです!」


「「その四人目は一体どこにいるんですか!?」」


二人が詰め寄ってくる。


ど、どうしよう...


すると、私の視界に、誰ともパーティーを組めず涙目になり、こちらの騒ぎに目を向けるソフィアが映った。


こ、こうなったら!!!!


私はソフィアの方にズカズカと歩き出し、彼女の前に立った。


や、やばい。緊張で顔が強張っちゃう。


「ひぃッ」


突然物凄い形相でやってきた私に、ソフィアが小さく声を漏らす。


私は一呼吸おいて、彼女に言った。


「私とパーティーを組んでくださいッ!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る