ジェシカside

ワタクシの誕生日会があった次の日の夜。


今日も様々な稽古やお勉強を終え、漸く眠りにつけるという時、ワタクシの心の中はモヤモヤしていましたわ。


“一人の女の子としての幸せを、見失わないでほしい”


何だろう、あの時からリリー様のことが頭から離れませんわ。


「女の子...」


ワタクシは、ピンクの壁紙に可愛い置物、本棚の上には沢山のぬいぐるみが置かれたワタクシの部屋を見ますわ。


この部屋は、外向けの公爵令嬢としてのワタクシではなく、本当のワタクシでいられる場所ですわ。


「ぴょん吉様、ワタクシ昨日からリリー様のことが頭から離れないですわ...これが、お友達になりたいという気持ちなのでしょか?」


ワタクシはベッドの上に置いてある、ウサギさんのぬいぐるみに話しかけます。


ワタクシは今まで、政略的な友好関係しか築いてこなかったので、自分の気持ちでお友達を作ったことがなかったのです。


なので、これがきっと、お友達になりたいという気持ちなんだと思います。


「うぅ...まさか、ぴょん吉様に相談しても、モヤモヤが晴れないなんて、初めての経験ですわ...」


ワタクシは、この心のモヤモヤを解決する方法を考えます。


「あ、そうですわ!! 屋敷に長く仕える使用人の方達なら、この気持ちの正体をきっと知っていますわ!!」





ワタクシは屋敷の会議室に、おじい様の代から仕えている使用人さん四人とともにいました。


男性と女性の使用人さんが二人ずつなので、正確な意見が聞けそうですわ。


四人には座ってもらって、ワタクシは立って昨日の出来事をお話しましたわ。


「――という訳なのですわ。この気持ちは一体何なのでしょうか?」


ここにいるのは、長年の経験を積んだ、人生の先輩方ですわ。きっと正しい答えを知っているに違いありませんわ。


四人は、年齢によるしわが寄った目で、どこか遠い目をしながら答えました。


「恋ですね」

「恋でございます」

「恋ですな」

「恋でやんす」


ワタクシはまさかの答えに、食い気味に答えますわ。


「いやそんなわけないですわ!! こ、これのどこが恋なんですの!? ま、まず、ワタクシたちは女性同士ですわ!!」


「いや恋ですね」

「恋でございます」

「恋ですな」

「love」


「いや絶対違いますわ!! あとなんで最後英語なんですの!! あ、あなた発音いいわね...じゃなくて!!」


その日は結局、ワタクシの心のモヤモヤは、解消されませんでしたわ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る