第21話

ジェシカの誕生日から二日後の朝。


私の部屋のドアがノックされた。


そして、ドアの向こうからレイの声が届く。


「お嬢様、ジェシカ様より手紙が届いております」


え、ジェシカから手紙!? ま、まさか、前に怒らせちゃったことについてかな?


「ちょっと見せてもらえるかしら?」


「はい」


私は、部屋に入ってきたレイから一枚の封筒を受け取り、その中から手紙を取り出す。


すると、妙に可愛いデコレーションが施された手紙が出てきた。


そして私は、その中身を恐る恐る確認する。


―――


拝啓、リリー・リステンド様


以前ワタクシの誕生日パーティーで、リリー様のマナーについて思うところがありましたわ。

別にワタクシはそれでも良いのですが、もしリリー様が今後、貴族としての振る舞いを学びたいと仰るのなら、ワタクシが教えてあげてもいいですわ。


これは別にあなたの為じゃなく、同じ公爵令嬢のマナーができていないと、ワタクシが恥をかきますわ。だから、なるべく、できるだけ、来てほしいですわ。


それと、リリー様はケーキがお好きであってるかしら? これって本当にあってるかしら? もし、もしケーキが好きなら、今予約が取れない有名なお店『メチャビーミ』は、ワタクシの知り合いが経営していますの。ですからたくさん用意できますわ。


あと、この手紙はあなたが言った通り、女の子らしくしてみましたわ。個人的には、とっても可愛くて気に入ってますの。でも、他の人には絶対に見せないで下さいまし。


お返事待ってますわ。


ジェシカ・メリストン


―――


「な...な...何なのよこの優しさに溢れた手紙はッ!!」

「お嬢様?」


きっとジェシカは、マナーがなっていない私を気遣って、教えてあげると言ってるんだわ!!


しかも、私の好みを把握して、『メッチャビーミ』のケーキまで用意してくれるなんて!!


「お嬢様、優しさというより、愛情のような気がします」

「そうね、これが誰にでも慈悲の心を持つジェシカの、無償の愛ってやつね。まったく...ジェシカはまるで聖女じゃない!!」

「いえ、誰にでもこんな手紙を出しているとは思えないのですが...」


ゲームでも好きだったキャラの、ジェシカからの招待よ、絶対に行くわ!!(ケーキもあるし)


「よし、早速返事を書くわよ!!」

「そう仰ると思い、既にジェシカ様が好きそうな、可愛らしい便箋を用意しておきました」

「わぁ、とっても可愛いわね!っていつ用意したのよ!?」

「私、侍女ですので」

「答えになってないわよ...」


あれ? レイはなんで封筒から手紙を出す前に、ジェシカが可愛い手紙が好きだって気づいたのかしら?


まさか!!


「レイ。あなた、先に手紙見たわね?」

「はい。毒や爆発物がないか確認いたしました。ついでに中身も気になったので拝見しました」

「やっぱり...封蝋が壊れていないけど、どうやって中身を確認したのよ」

「私、侍女ですので」

「答えになってないわよ!!」

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