第4話

私は軽く小躍りしながら食堂へ向かっていた。


ヤッホーい!! ごはんだ! ごはんだ! ワッショイ!! ワッショイ!!


なぜ私がこんなにハイテンションかというと、少しずつ思い出してきたリリーの記憶によれば、この家のごはんは超豪華なのだ!!


リリーは使用人に文句を言いたいがために難癖つけてたけど、味は間違いなし!!


ふふふ、楽しみだな~。


私が食堂につくと、すでにリリーの家族三人が揃っていた。壁際にはメイドや執事がずらっと並んでいる。


私は三人に軽く挨拶をして席に着いた。


暫くして、先ほど部屋に来た初老の執事が、私の目の前に料理をおいた。


うわ~美味しそー!!


私は執事にお礼を言う。


「ありがとう!!」


「......あ、ありがとう!? そんな......お嬢様は“ありがとう”なんて言葉知らないはず......」


いや知ってるわ!! 普通にめっちゃ失礼だな!!


小声で言ってるつもりでも聞こえてるからな!!


なんか周りの使用人たちもざわついてるし......


まあいいわ、そんなことよりごはんよごはん!!

 

ふわっふわのオムレツに温かいスープ。


カリっと焼かれたベーコンの香りが食欲をそそるわ!!


それじゃあ早速。


「いただきまーす!!」


私がそう言った瞬間、またも周りの使用人たちがざわつきだしたが、気にせず食べることにする。


そして料理を口へと運ぶ。


う、美味すぎる!! なにこれ!? なにこれ!!

シンプルな料理のはずなのに、オムレツの具やベーコンの味付けは複雑で、信じられないほど美味しい。


素人目にもこの料理を作った人のこだわりと努力が感じられる。


私は物凄い勢いで料理を食べる。両親や使用人たちが唖然とした表情でこちらを見てるが、料理が美味しすぎて気にならなかった。


「ごちそうさまでした!!」


まさかここまで美味しいとは......


ぜひこれを作った人に感謝を伝えたいわ!!


「ちょっといいかしら?」


「は、はい!!」


近くにいたメイドさんに話しかけたら、ビクッと肩を震わせ、おびえた表情で私の傍にやって来た。


「この料理を作った人は誰かしら?」

「ひぃっ、りょ、料理長でございます」

「じゃあ料理長をここへ呼んで下さる?」

「か、かしこまりました!!」


そう言うと、彼女は調理場の方へと走っていった。

去り際に「さよなら料理長、今までありがとう...」と小さく聞こえたが、取り敢えず今は無視することにする。


暫くして、料理長が真っ青な顔をして全力で走ってきた。


「お、お嬢様!! な、何か料理に問題がございましたか!?」

「その料理のことなんだけれど」

「は、はい...」

「とっても美味しかったわ!!」

「へ?」


そして、私はいかにこの料理が素晴らしいかを力説した。


「―――だからね、いつも私たちのために料理を作ってくれてありがとう!!」


私がまあまあな時間力説したあと、周りを見ると食堂はシーンと静まり返っていた。


や、やばい!! ちょっと一方的に喋りすぎちゃったかしら!?

み、みんなの視線が私に集まってる!? は、恥ずかしい...


すると、一人の使用人がパチパチと拍手をしだした。

それに続いて他の使用人たちも拍手をしだし、やがてそれは食堂全体に響く大喝采となった。


え、な、なに!? ど、どういうこと?


「お嬢様が変わったという噂は本当だったんだ!!」

「うぅ...お嬢様...ご立派になられて!!」

「幼いながらに下の者を思いやる気持ち...わたくし脱帽いたしました!!」

「私をリステンド公爵家の料理長として一生仕えさせて下さい!!」

「アンコール!! アンコール!!」


え、なに!? リリーが感謝したから、みんなが感動したってこと!?

あと、アンコールってどういうことよ!! もう一回あの力説をしろってこと!?


うっ、な、なんかやらなきゃいけない雰囲気だし、もう一回料理長への力説をしなきゃ...


私がまた同じセリフを言うと、食堂全体が大歓声に包まれた。


ちょっとなんなのよこれえええええええ!!

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