番外 -さくら

 コンコン、と控えめな音が鳴る。扉を開けると、仄かな花の匂い。


「んぁ……さくらか……?」


「……あの、どうも」


「なんだ……何の用だ? なんか頼んでたっけ」


「いや……その……」


 彼女がずずと袋を渡してくる。


「お詫びを……と、思いまして」


「お詫び?」


「……え?」


 首を傾げると、彼女からもはてなと返ってくる。


「……じゃなくて、日頃のお礼というか」


「日頃のお礼、ほう」


「ほら、はやて君はいっぱいお仕事くれるわけだし、お得意様に送る的な」


「こっちとしてもやって欲しいことやってくれる相手が居るってのは助かってるけど。まぁくれるっていうんならありがたくもらうよ」


 金の心配とかは今すべきことじゃないだろう。


「そっか。ウィンウィンだね。これからもよろしくね、それじゃ!」


 彼女の服を掴むとがくんと動きが止まる。


「んで、何したのお前」


「何の事か分からないよ」


「素直に話したら減免してやるぞ」


 彼女は抵抗をやめ、ゆっくりと振り返る。


「まぁ座りなよ」



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