2.Lv.35 -10 道のり
地上から遠く、地下へ、地下へと降りていく。空の光は見失って久しい、暗く、狭い通路を歩き続けていれば嫌でも気が滅入ってくる。反響する足音もそれを包むような静寂も、暗い水の中でもがくような息苦しさを伝えてくる。
それでも、俺たちは先へ、奥へと進んでいく。
「もうそろそろですかね……」
試験内容に触れるので返答は出来ない。
「ねむい」
「真面目にやってます?」
「真面目に聞いてるから安心して進め」
彼女が飛び級のために課された異界の中での実地試験。その内容もいよいよ佳境である。すでに納品分の魔石は集め終え、チェックポイントに沿って最終目標である魔物が住まう洞窟の奥へと降りていく。
「なんでこんなじめじめした暗い所に……まじ陰気」
「ここじゃなくても試験に選ばれるのは行くのが困難な難所だ。魔物に文句言っても無駄だ」
「あーあーはやてさんはそっちの肩持つんですか」
試験官だから中立だぞ。
幾度も曲がり、膨らみ萎みを繰り返す、洞窟の中を進む。
やがて突然、開けた巨大な空間に出ることになる。
「ここが最終チェックポイント。……これで、試験の二つは終わりです」
「ここから、だな」
すり鉢状の空間の、下部は平らな水面が埋めている。水は透き通るが、暗くてそこまで見えない。水面より少し上に行った所に平らな歩ける部分がある。その先にも穴があり、また奥へと繋がっているはずだが、戦う場所を選ぶなら水際のその平らな地面である。
彼女は索敵を済ませ、穴からロープを垂らす。あちらに渡るにはいったん水の中を通らなければならない、空でも飛べるなら別だが。
その空間は見通しが良く、穴を除けば逃げる場所はない。俺はここに留まり、上から彼女の様子を見守ることにする。
彼女はすいすいと泳ぎ、向こう岸まで到達する。まだ目的の魔物は居ないようだ、振り返り、不安そうな顔で手を振ってくる。一応、手を振り返しておいた。静かに、水を渡るのに使った道具を片付けていく。
彼女は息を潜め、目的の魔物を引き寄せるため、奥の穴の一つへと進んでいった。足音は聞こえない。ただ心を押し潰すような静寂だけが広がっている。
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