第30話 神殿

しばらく袋のようなものに入れられ揺られて、目の前がまた開けた。

真っ暗な場所から急に外に出たので、光が眩しい。

「ここは…?どこ?」

私は誰、とはならない。

どうやら転生したわけではなさそうだ。

何でこんなに眩しいのだろうと思い、周りを見る。

「わあ」

私が連れてこられたのは、神殿のような場所だった。

真っ白に磨かれた大理石が床から天井まであり、さらにシャンデリアの光があり眩しかったのだと気が付いた。

「すごい…」

誕生日祭典の時の神殿よりもきれいだ。こんな神殿、近くにあったのだろうか?

そこで、あることに気が付いた。

「…ディールマティーナはどこ?」

わたしもこの世界に来て数年がたち、側仕え慣れしたようで、

貴族学校以外の場所で側仕えがいないと少し落ち着かない。

「わ」

前が放射状に光り、人が現れた。

「マリリーンさん、初めまして。わたくしはアルペンキューテ。この世界の聖女ですわ。」

「あ、アルペン…キューテ…さん?ああっ!」

デュートの誕生日祭典のときにリュートに読み聞かせた本。

あそこに載っていた。

「文学の聖女、アア啞阿唖アルペンキューテ‼」

そう叫ぶと、目の前の聖女が微笑んで言った。

「ええ、よくご存じで。あなたは、今から『英知の聖女マリリーン』となります。」

「え?えぇぇぇぇぇぇっ⁉」

え、英知の?せい、聖女?私が?

「ええ。そのために、あなたに能力を授けます。」

そういうと聖女アルペンキューテは聖女2号(自分)に丸い光を投げた。

「さあ、キャッチして!」

「え?」

サッカーボールくらいの大きさの光を受け取ると、胸くらいの長さだった髪が腰下まで伸び、今までより金色の要素が強くなった。

制服には梟のマークがついた金のバッジが魔石の横に付いた。

変わったのは見た目だけではない。

膨大な量の知識が頭の中に飛び込んできた。

重要なことからどうでもいいことまで、全てが入ってきて少しくらくらする。

「何なんですか、これ…?」

「『あなたは今から、英知の聖女マリリーン。』と言いましたでしょう?

その通りに解釈すれば良いのです」

そう言い残すと、聖女1号はぼんやりと消えていった。

え?ちょっと、置いていかないで?まったく状況がつかめないよ?

おーい………………?

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